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許されない罪、救われる心
132部分:第十二話 家族その五

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第十二話 家族その五

「本当に。けれどそれもできなくて」
「しなくてよかったわ」
「そうなのね」
「だから今こうしていられるから」
 それでだというのだった。
「だからね」
「弥生・・・・・・」
「生きてね、如月」
「生きていいの」
「誰にだって生きる権利はあるから」
 切実な言葉だった。これまで以上に。
「それに」
「それに」
「光を見ることもね」
「光?」
「希望っていうのかしら」
 少し考えてから述べて出した言葉だった。
「それはね」
「希望なの」
「ほら、パンドラの箱ってあるじゃない」
 今度はギリシア神話だった。
「それ、知ってるわよね」
「一応は」
「この世には色々な災厄があるけれど」
 それが入れられていたのがパンドラの箱だ。その女性パンドラは好奇心故にその箱を開けてしまってだ。この世に様々な災厄を入れてしまった。
 しかしである。それでもなのだった。
 その箱には一つだけ残っていた。それこそがだ。
「希望があるじゃない」
「希望が・・・・・・」
「如月は許されないことをしてしまったけれど」
 その許されないことが何かもだ。もう言うまでもなかった。
「それでもね」
「希望は」
「あるから」
 こう話すのだった。
「だから。生きて」
「生きる」
「そう、どんなに辛くても苦しくても生きて」
 切実な言葉だった。
「御願いね」
「うん、わかったわ」
「そうしてね」
「弥生、本当に有り難う」
 如月はベッドの中でも泣きはじめた。涙が流れてくる。
 その涙を拭くことなく。弥生に礼を述べたのである。
 そしてだ。二人向かい合って。
「寝よう」
「ええ」
 こう言い合って寝るのだった。そしてだ。
 翌朝。目覚めるとだった。弥生は自分の制服に着替えながら話した。
「ねえ」
「ねえ?」
「学校はまだよね」
「うん、それは」
「今日は一日家にいるのね」
「そうなの」
「そう、わかったわ」
 如月のその言葉を受けてからだった。
「それじゃあね」
「弥生は学校よね」
「ええ、それはね」
「じゃあ。行ってらっしゃい」
 自分も起き上がってだ。パジャマ姿で弥生に告げた。
「楽しくね」
「ええ。それでね」
「それで?」
「学校が終わったら帰って来るから」
 こう如月に言うのだった。ベッドの傍に立ってそこでシャツを着てスカートもはいてブレザーも着てだ。最後にネクタイも締めていた。

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