風雲を走る
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うな女子やまわりのものが必死にそいつをかばうのだ。それはもう涙をしのんで必死にもうこのものは頭の弱い子で自分のしたことがわかっておりませんなどとのたまう姿はなんだか気の毒でしょうがない。だがこれでおれはこの場でこの殿様を血祭りにあげることが出来なくなった。この者らの必死の懇願がおれが出て行ったら、全て台無しだ。
おれは、再度平伏してその場を見ていた。殿様もすこしきょうをそがれたようでそのまま言ってしまった。
例の上士はおれにかかわりたくないのか何も言わず、ひそかに失禁しているのを隠していってしまった。
そんなことを十六歳になり一人前の大人になった。今の自分は思い出していた。その時かった本はもう読み込まれて擦り切れてぼろぼろだが大切にいまでも小屋にある。おれはそのときからいままで、体を一身に練磨することだけをやりとおした。今では、そこらの剣士ふぜいでは到底およばないぐらいの腕だろう。なぜおれに古武術の知識があるのかというと、俺の父は当時八歳の俺を世を忍んで山に連れてきた。父は無手の武術の達人であった。日ごろから尋常じゃない鍛え方をされており、赤子のときには父の遊びで大人の指をつかめばあまりの握力に大人が飛び上がるほどの力があり、眼つきは尋常じゃなく大きくなるにつれてどんどん、技も力も上がっていった。
今なら、どんな剛の者だろうがおれの指の一押しで強烈な突きをくらったようにのびてしまうだろう。父は早くに病にかかりしんだ。
で、十六歳の今自分の身の振り方をそろそろ考えんといかんと思った。そこでとりあえず、見分を広めに江戸へ行こうと決めた。
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