風雲を走る
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えていた。
俊太郎は一応読み書きなどどこでおぼえたかなぜか、小屋には本の山があり字や教養はそれで身につけた。なんでも、町に行ったとき、山中で取れた松茸をうまく売りさばき、質屋にこれまた上士のやつらが家の整理をして一部読めなくなったり、その家のひいじいさんの代の家の長男がたいそうな学者で、一通りの読み物を書き記したのが残っていて、無学な家の子せがれが質屋に小遣い稼ぎに売りつけたのをたまたま目にして、おもむろに一冊とってみれば、なんだ、たしかにすこし字もかすれて読めなくなっているが立派な学術書だと見抜いて松茸の売り上げ全部それにつぎ込んだ。
そして、寝る間もおしんでとうとう全て読破してしまった。
そうそうそのとき橋を通りかかったとき、殿様がそこをちょうど通りかかり、胸がむかついたがここは抑えて平伏して通り過ぎるのをまっとると、魚売りが魚を一匹逃がしてうまのまえに出てしまった。殿様の輿を止めてしまった。輿から顔をだしたのが噂の容堂公でなるほど、自分より下のものをまるでごみのように見る目に刀こそないが熊さえも打ち倒すこの手で血祭りあげてやろうか考えておると、「切れっ」と冷たく言い放ちもう我慢できないと立ち上がろうとしたとき、それを見た上士の一人が刀の柄に手をかけた。それをみた魚売りがあまりのことに逃げ出した。心の中でばかっと叫んだ。間が悪かった、上士の一人が刀を抜いていたのだ。焦った、おれは、もう一人に通せんぼされた。おれはそいつを、下からにらみあげた、激昂していたおれの目をみてそいつは思わず失禁した。だが、間に合わなかった。魚売りは切られてしまった。おれのなかでなにかがはじけた。殺す!
誰をかと聞かれれば殿様その人だ。だが別の声がこうもおれを諭した、殺すのか?俊太郎、鉛玉にやられた熊なら死なせたほうが情けだろう。だがおまえがここで殿様を殺したら。そのほかの並んで座るものも切られる、おまえがここで大立ち回りをして全員血祭りにあげてもこのものらは家も家族もいる、いずれ、突き止められ、拷問にかけられるぞ。
おれは、そこで、自分がとんでもない間違いをしたことを痛感した。おれの中には山の中での自由な暮らししかなかった。だから同じ仲間の熊が人間にやられて死ぬのに初めて憎しみを覚えた。そしておれは殿様を憎しみそれが当然と思った。しかしこの町でそれは通用しない、あの虫歯持ちのバカ殿は生まれたときからすんでいる世界が違う、身分の低い自分がその場でどう立ち回ろうとあいつ一人の命で何十人もの関係ない命が奪われる。
だが、そこにいた、郷士の名も知らぬ弱味噌の小僧が自分の小太刀であろうことか殿様にめがけて突っ込んで、輿に一太刀入れた、その時、殿様は確実にその頭の弱そうな髪が変にちぢれた小僧にしり込みした。おれは、すこし様子をみて、その場を見ていると、なんと身分の高そ
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