第6章:束の間の期間
第190話「打てる手」
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げ、優輝達は山へと入っていく。
「式姫の召喚かー」
山菜を探して採取しながら、葵はふと呟く。
「あら、誰か会いたい式姫でもいるのかしら?」
「んー、そういう訳じゃないんだけどね」
式姫同士でもそこまで関わりが深い訳ではない。
全員と知り合いではあるが、葵にとってはどうしても会いたいと言う程ではなかった。
「……でも、これからの事を考えると式姫ももう何人かいて欲しいよね」
「まぁ、それもそうね。打てる手は多い方がいいもの」
欲を言えば、江戸時代に最後まで前線に立っていた式姫がいて欲しい。
椿と葵は、頭の片隅でそんな事も考えていた。
「………」
「……優ちゃん?」
「どうしたのかしら?」
そんな二人を、優輝はじっと見ていた。
その視線に気づき、椿と葵はどうしたのか尋ねる。
「一つ、式姫召喚について聞いていいか?」
「ええ、いいわよ」
「式姫の根幹となる性質は妖と同じで、幽世にいる存在を“式姫”と言う器に入れて召喚する。……その認識で間違いないな?」
「そうだね」
式姫も妖も、元々は幽世に生息する存在だ。
それが式姫と言う器に収まるか、妖と言う存在として現れるかの違いでしかない。
「条件さえ整えば、妖も式姫として召喚する事が出来るわ。前例もあるしね」
優輝は知らない事だが、過去には妖だった存在が式姫になった事があった。
妖と言う中身を浄化するなど、様々な条件が必要だったが。
尤も、今は関係ない余談である。
「……なら、緋雪も可能か?」
「ッ……!」
その問いに、椿と葵は目を見開いた。
「……可能かどうかで聞かれれば……可能よ」
「幽世にいて、それに別側面とはいえ守護者にもなれる程。……元々妖だった訳でもないから、面倒な条件を満たす必要もないね」
元々妖であれば、“妖浄の水”が必要になる。
しかし、緋雪は元々人間なため、必要なかった。
「後は型紙と……そうね、可能性を上げるために、緋雪に縁あるものがあればいいわ」
「……そうか」
つまり、条件自体は揃っている。
それが分かったのか、優輝は深く頷くように返事した。
「優輝、今……!」
「……なんだ?」
「……いえ、気のせいだったわ」
その様子を見ていた椿が、何かに気付いたように声を上げる。
葵も同じく気付いていたようで、声を上げずとも驚いていた。
「『かやちゃん、今……』」
「『ええ。今の優輝は感情を失っているはず。なのに、今のは……』」
「『うん。明らかに、感情が戻っていたよね』」
そう。緋雪の事に関して、僅かにとは言え、優輝から感
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