第二話ダンジョンの洗礼
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「はぁ…はぁ…」
僅かな灯りしかない薄暗い通路を
日下飛翔ルーガーは一人歩いていた。
空気が重い。
飛翔が最初に感じたのはそれだった。
辺りには鼻につく死臭や、ここにしか生えない植物の匂いや地面に落ちていたり壁にある、鉱石の匂いが
立ち込めている。
今日ここに初めて来た、飛翔はただこの場所にいるだけで、精神的にも肉体的にも消耗していた。
無理もない飛翔が今いるのは、
オラリオが世界に誇るダンジョンなのだから。
飛翔がダンジョンに入るのは今日が始めてだ。
ドノバンとの話を終えた飛翔は、
慰霊祭開催のための資金五千万ヴァリスを手に入れるため、ダンジョンに入った。
現在飛翔がいるのは、中層16階層
いかにレベル2の上級冒険者とはいえソロで来るようなところではない。
だが大金を稼がなければならない、
飛翔はためらわなかった。
「ここまでで稼げたのはこれだけか」
飛翔は十六階層に来るまでに稼いだ、戦果を確認する。
魔石が15個に、光を放つ硬い鉱石それにインファントドラゴンが
落としたドロップアイテム、小竜の牙と小竜の尾である。
「小竜の牙と尾はそれなりの金にはなると思うが、流石に百万ヴァリスとはいくまい」
飛翔は手に入れたドロップアイテムを腰のカバンから取り出して、眺める。
質のいいものだ。上層、中層に限ればなかなか手に入らない代物だろう。
さぞいい武器の素材になるだろう。
(このまま買い取らせるよりは、武器の素材として、使って武器として売るのもありか)
飛翔は二つのドロップアイテムを見ながら血が騒ぐのを感じる。
飛翔は鍛冶師だ。
彼の母方の祖父が腕のいい刀鍛冶だった。
飛翔は幼い頃から祖父に剣術と鍛冶の技を叩き込まれて育った。
その後山籠りしていた時、最初にファルナを与えてくれた、あめの
まひとつめのみこと、通称まひと様の元で更に腕を磨きレベル2になったとき発展アビリティ鍛冶を手に入れた。
上級鍛冶師の腕を振るえば、ダンジョンにソロで潜るよりも、危なくなく金を稼げるだろう。
(とはいえ、それがしは未熟者
師であるまひと様からは、刀にだけ師の一目の銘を刻むことが許されている身)
そんな未熟者の作品に買い手などつくのだろうかと、飛翔は思う。
飛翔の師まひとは、鍛冶の鍛練に厳しかった。
飛翔が弟子入りしていた間、一度も誉められたことはなかった。
また飛翔は他の鍛冶師との交流がないため師のあまりの高みに触れていて、自分の鍛冶の腕に自信が持てないでいた。
現に師の次にファルナを授かったスサノオファミリアでは、鍛冶師でありながら、仲間のために一度も武器も防具も作ったことはなかった。
まぁスサノオファミリアは、三人しかおらず、三人のうち二人が武器を持たない素手で戦う冒険者だったし、一人、刀を使
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