118部分:第十一話 迎えその七
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第十一話 迎えその七
「このお日様を」
「私は」
見ることはできない、こう思っていた。
しかしであった。その如月に水無が言った。
「今も辛い?」
「はい・・・・・・」
水無のその問いにこくりと頷く。
「とても」
「生きていたくないのに」
「思ってます」
実際にそうだというのだった。今の彼女はだ。
「もう、誰もいないし・・・・・・」
弥生も家族も他の友達もだ。全て失ってしまった。
「それに何も」
命と同じだけ大切にしていた写真も自分の部屋にある思い出のものもだ。全て岩清水達に壊され引き裂かれてしまった。本当に何もなくなっていた。
「ですから」
「何もなくしたって言うんだね」
師走は如月のその言葉にも応えた。
「そう」
「本当に。もう」
「いや、まだあるよ」
「何がですか。本当に何もなくなったのに」
「光があるよ」
それがだというのである。
「光がね」
「光・・・・・・」
「そう、光がだよ」
また如月に話した。
「この光がね」
「光ですか」
如月はここで上を見上げた。ようやくだった。
その光は彼女を照らしていた。その蒼白になりやつれてしまった姿をだ。その彼女も照らしていたのだった。
「この光が」
「そうだよ。それでどうかな」
師走は穏やかな顔でまた如月に問うた。
「今は。昔みたいにできるかな」
「昔・・・・・・」
「そう、こう言ったら何だけれど」
一呼吸置いてからであった。こう話した。
「君がかつてしてきたことは。できるかな」
「あれを・・・・・・」
つまりいじめである。師走が言うのはこのことだった。
「あれをですか」
「そう。できるかな」
こう彼女に問うのであった。
「今は」
「いえ」
師走のその問いにだ。首を横に振った。力なく静かな動きである。しかしそれでもだった。
「とても。だから今みたいになって」
「もう絶対にしないね」
「はい・・・・・・」
「できないね」
「できません」
力ない言葉だが確かに言った。
「いじめは。もう」
「君を糾弾している彼等は」
師走は岩清水達についても話した。
「同じなんだ」
「同じ・・・・・・」
「いや、もっと酷いかもね」
そうだというのだ。
「あれはね。いじめはいじめでも」
「そうですね」
水無も師走のその言葉に応えた。
「あまりにも惨いものです」
「そう。そしてわかった筈だよ」
師走は水無と話してからだ。また如月に香を向けて述べた。
「いじめられるのが。どれだけ辛いかね」
「わかってました」
如月は今度はだ。かつての自分をまた思い出した。部活の時にいじめられていたことをだ。
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