第二章
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」
そこまで一気に言うや、「さぁ、こちらへ。」と、さも何も無かったかのようにエリーザベトが歩き始めようとした時、ルーファスは半眼でエリーザベトへ言った。
「お前…ヘルムートはどうしたんだよ…。」
「邪魔なので置いてきました。」
笑って言ったエリーザベトの答えに…三人は亭主であるヘルムートを、心から哀れに思ったのであった。
さて、エリーザベトは街の外れに待機させていた馬車へと三人を乗せ、街の外周にある大きな宿へと来た。
宿…とは言え、そこはやはり港町。豪奢な作りではなく、素朴ではあるが頑丈な作りの二階建ての宿であり、一階には食堂も併設されている。
「エル…ここに泊まるのか?」
「そうですわ。もう四人分部屋を用意しましたもの。」
何故だかエリーザベトはご機嫌である。その裏に何か隠しているのをルーファスは感じていたが、それが何なのか分からず、ご機嫌なエリーザベトを先頭に、皆はその宿へと入ったのであった。
「いらっしゃい!あら、エリザちゃん。その方達が言っていたお友達かい?」
「そうですわ。で、あいつは来てますの?」
「ええ。エリザちゃんが出発した直後に到着されてるよ。」
どうやらエリーザベトは、ここの女将と顔見知りのようである。だが、その話し方からルーファスは嫌な予感がした。察するに、どうやらもう一人の客を呼んでいるらしい。それはきっと、自分の知り合いだとルーファスは考えたのだ。
故に、ルーファスはニッと笑みを見せてエリーザベトへと言った。
「俺ら、少し用事を思い出した。」
師の顔に驚愕したヴィルベルトは、マルクアーンの傍らに後退して「そ…そうですね…。」と弱々しい声で答え、マルクアーンも何かあるとみて、取り敢えず相槌を打った。
だが…それはもう遅いと言えた。
何やら階段からドタバタと走り下りてくる音がし、それが四人へと近付いて来たからである。
「ルーファス兄上〜!」
そう叫びながら男性が走って来たため、皆はギョッとして思わず避けた。故に男性は止まり切れず、そのまま奥の壁へと強かにぶつかったのであった。
「クリス…何でお前まで…。」
その男性はクルッと向き直り、ルーファスの前に来て言った。
「お久しぶりです、兄上!」
「お前の兄になったつもりはねぇよ!」
「そんなつれないこと言わないで下さいよ!折角ここまで来たのに!」
そう言うや、男性はシクシクと泣き出した…。
この男性はクリストス・フォン・バーネヴィッツと言い、伯爵位を与えられている。その名の通り女公爵の血縁であり、女公爵からして甥にあたる。エリーザベトとは従兄弟で、ルーファスも幼い時分からの親しい間柄であった。そのためか、彼はルーファスを「兄上」と呼ぶのだが、ルーファスはそうを呼ばれることが嫌なようである。
「ちょっとクリス!
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