第二章
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無機物に妖魔を定着させて使役するものであったが、あやつはそれを…人間に応用したのだ。あんなもの考えなくば…今頃は…。」
マルクアーンはそこまで話すや、ハッと顔を上げた。
「いや、済まん。詰まらぬ話だったな…忘れてくれ。」
そう言うや、彼女は煌めく水面へと視線を落とし、それ以上語ろうとはしなかった。
暫くは風にあたっていた三人だが、夕も近く日が陰り始めたため、皆部屋へと戻って下船の支度に取り掛かったのであった。
水平線へと日が沈み切る頃、船はゲシェンクの港町であるシークへと入った。そこは夜になろうと言うのに活気に溢れ、多くの人々が行き交っていた。
三人は下船するや、先ずは宿を探しに街中へと進んだが、そこで思わぬ人物に声を掛けられた。
「済みません…旅の方。」
それは美しい女性で、この港町には不釣り合いなドレスを纏っていた。ヴィルベルトが思わず心の中で歓喜する程の容姿で、直ぐに返事をしようとした矢先…ルーファスが顔を引き攣らせて叫んだ。
「何でお前がここにいる!」
「あらやだ…もうバレましたの?」
「バレねぇ訳ねぇだろうが!それに何だ、その格好は!自分が浮いてるって自覚あるのか!?」
話から察するに、どうやらその女性はルーファスの知り合いのようである。
それを横目でヴィルベルトは苦々しく思いつつ、未だ顔を引き攣らせている師へと言った。
「お知り合いですか…?」
その問いに、ルーファスは盛大な溜め息をついて答えた。
「残念ながら…そうだ。こいつは叔母上の姪のエリーザベトだ。ベズーフの中流貴族ヘルムート・フォン・アントーネ伯爵の奥方だよ。」
それを聞くや、ヴィルベルトはガックリと肩を落とした。そんなヴィルベルトを見て、マルクアーンはさも可笑し気に笑って言った。
「ヴィルベルト。そなた、この御婦人の様な容姿が好みなのか?」
「い、いえ…別にそうではなく、ただ…」
「ただ…何だ?」
マルクアーンはニヤニヤしながらヴィルベルトに迫ったため、ヴィルベルトは「もう、その通りです!」と、自棄っぱちな返事をしたため、マルクアーンは堪え切れずに大笑いしたのであった。無論、ルーファスも隣で腹を抱えて笑っていた。
笑いが収まった頃、マルクアーンはエリーザベトへと向き直って問い掛けた。
「しかしなぜ、ベズーフの伯爵夫人がこの様な所へ来ておる。暇でも出されたのか?」
「大賢者様、お初にお目にかかります。エリーザベト・フォン・アントーネと申します。…って、いかな大賢者様でも失礼ですわ!私は六日ほど前から、主人と共にシュクの街のコレンテ公に会いに来ていたのです。あちらのギルドに話を通して来ていたので、弟が魔術で大賢者様方が来られる事を伝てくれたのです。もう宿も手配してありますので、私が案内役としてお迎えに上がったのですわ。
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