第二章
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らそう答えてもらったヴィルベルトは、「そうだったんですか。」と言って納得したが、まだ何か聞きたそうにしていたため、マルクアーンは苦笑しつつ言った。
「まだ聞きたい事がある様だな。構わんから言ってみろ。」
それに対しに、ヴィルベルトは神妙な面持ちで返した。
「では…一つだけ。先の大戦の…本当の原因は何だったんですか?」
その問いに…マルクアーンもルーファスも体を強張らせた。
一般的に知られる理由…謂わば表の理由としては、ゾンネンクラール皇国がリュヴェシュタン王国に戦を仕掛けたことが発端とされている。
この二国とフルフトバール王国との狭間に、レベンデヒ海と呼ばれる広大な湖がある。魚介類の宝庫としても知られ、ゾンネンクラールはリュヴェシュタンが保有する水域を領地にしたかったのだとされている。
だが、真実はそうではないのである。
戦当時の各国の内情は実に複雑で、一国の貴族達でさえ完全に把握することは出来なかった。謂わば他国の貴族へと姻戚関係を作り、富を増やそうと…どの国でも同じようにそれを行っていたため、酷い時は一つの公爵家の姻戚が全ての国に居ることさえよくあった。
それとは逆に、一つの国に全ての国の貴族の娘が集まっていたこともしばしばで、互いに易々と手出し出来ぬようになっていたとも言えよう。
だが、悪事を考える者はいつの世にもいるもので、その計略が戦を煽って戦火を拡大させたのである。
その名は未だに明かされてはいないが、発端を築いた一人はゾンネンクラールの皇族であったことは分かっていた。しかし…その名は明かされる事なく、皇族の家系諸共闇へと葬られたのである。
現在のゾンネンクラールは王国であり、元来は皇族家の分家に当たる。その王族すら、先の大戦については頑なに口を閉ざしている。
「わしはな…戦の切っ掛けを作った者を知っている。」
マルクアーンが口にした言葉は、ヴィルベルトの表情を固くさせた。未だ表に出せぬその者の名を、目の前の大賢者は知っているのだ。
ヴィルベルトはそれを聞きたい半面…それは永久に眠らせておくべきものとも思え、暫くは黙して考えていた。
隣に座るルーファスも口を閉じたまま、時は静かに過ぎて行く…。
そして、その静寂を破るように、マルクアーンが口を開いた。
「あやつとは…友であった。わしと同じく魔力は無かったが、その知識たるや、わしのそれを凌駕しておった。あやつが皇族の子でなくば、きっと…あやつが賢者と呼ばれて居っただろう。」
ヴィルベルトはマルクアーンの話しぶり、その人物と彼女の間に友情以上のものがあるように感じたが、人の過去を探るような自分を恥じて、マルクアーンの話に集中した。
「思えば…トロッケンへと共に留学していた際、魔術式を二人で考えた事が切っ掛けだったやも知れん。その式は
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