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魔術師ルー&ヴィー
第二章
T
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夕刻にはゲシェンクに着きそうだな。」
 スープを飲みながらマルクアーンがそう言うと、ヴィルベルトは食事の手を止めてマルクアーンへと問い掛けた。
「マルクアーン様は、どうしてゲシェンクに?」
 その問いに、マルクアーンも食事の手を止め、少し影のある笑みを見せて返した。
「旧友に会いとうなってな…。」
「旧友って…シュトゥフ様ですか?」
 ヴィルベルトは目を丸くした。だが、ルーファスは最初から分かっていたようで、小さく溜め息を洩らして言った。
「やっぱそうか。ここんとこ、シュトゥフ殿は体調を崩してんだ。ま、歳も歳だかんな。だから心配んなって、あの塔から出てきたんだろ?」
 ルーファスはそう言ってマルクアーンを見ると、彼女も小さく溜め息を洩らして返した。
「そう言うことだ。こうしてあれこれと言い訳を並べなければ会いにも行けぬ…。全く困ったものだ。」
 マルクアーンはそう言うと、再びスープに口をつけたのであった。
 その日は快晴で、空も海も穏やかであった。食事を終えた三人は、甲板へと出て風と景色を楽しむことにした。
 三人は置いてある空箱に座ると、暫くは広大なる海を眺めていた。そこには波と煌めく光りだけがあり…それを眺めつつ、マルクアーンはしみじみと呟いた。
「この様な平和が訪れようとはな…。あの頃は微塵も思わなんだ…。」
 それは誰に言うでもない独り言のようであった。在りし日々を水面に反射させているだけの…。
 だが、その呟きにヴィルベルトが返した。
「あの頃って…先の大戦の事ですか?」
「ん?あぁ…そうだ。あの戦は…最早戦とすら呼べぬ凄惨なものであった。お前達の世代が知るのは、本の一欠片に過ぎんからのぅ。」
「一欠片って…。」
 マルクアーンの言葉に、ヴィルベルトは顔を蒼褪めさせた。
 彼自身、先の大戦のことはかなり調べ上げていたつもりであった。だがそれさえ…マルクアーンにとっては一欠片なのだと思うと、ヴィルベルトは自身の震えを止められなかった。
「そう怯えるな。あれは、もう過ぎ去りし幻影だ。お前達が大妖魔の一位と二位を浄化したお陰で、随分と世界は良くなった筈だ。残る三体も、そう悪さは出来まいて。」
「三体…だけ?」
 ヴィルベルトは首を傾げた。彼が知っている妖魔を封じた塚は、少なくとも五十六ある。それに対し、マルクアーンが挙げた数は三体なのだ。
 不思議そうにしているヴィルベルトに、今度はルーファスが苦笑しつつ答えた。
「大妖魔は別格だ。妖魔は人の言葉を理解し、その欲に付け込むが、大妖魔ともなれば人を操りさえする。んでもって、小者は封じられてる間に消えてって、残ってんのが三体…って訳だ。残ってんのは、ゾンネンクラールの北にある封、ミルダーンの東にある封、そして…今から行くゲシェンクの中央にある封だ。」
 師か
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