変革のラストナイト
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しかし……自分から挑んどいて何やけど、これ勝てるんか?
衝撃の事実を聞いたばかりなのもあるやろうけど、指先が冷たく、足の先の感覚が上手く伝わってこない。この感覚……緊張のそれとは全然違う。これはうっかりミスをしてしまってどうすれば良いのかわからず混乱してる時に近い。撃墜のダメージも体に残ってる以上、こんな万全とは程遠い調子でちゃんと戦えるかと聞かれたら、YesとNoの二択なら間違いなくNoと答える。
しかも相手はついさっきまで守護騎士達を散々なぶり殺しにした男、アルビオンや。4体1の圧倒的有利な状況でさえ傷一つ付けられなかった元最強騎士を相手に、私一人が加わって何とかなるんやろうか?
なんて、後ろ向きな考えばかりしてても仕方ない。ここで勝たなければ、私は私にとって大事な全てを失う。敵がどれだけ強大でも、逃げるなんて論外や。
「敗北必至の戦いに自ら挑むか。お前は愚かだ。こいつらをさっさと見捨てていれば、二度と次元世界に姿を晒さなければ、このような事態になることもなかっただろうに」
「罪から目を背け、ずっと隠れ潜んでいれば良かったと? ……確かに、そうすれば皆を苦しめずに済んだかもしれへんな」
「……」
「私が首を突っ込まなければ、最初から何もしなければ、地球で皆と幸せに暮らせたかもしれへん。こんな苦しい思いを味わうことも無かったかもしれへん。でも……それでも、私は選んだ! 戦うことを、私らは選んだんや!」
「選んだ、か。ならば問おう、お前達の選択で誰かを巻き込んだら? お前達が生きて戦うために、誰かの人生を壊したら? 死なせたら、責任はどうなる? ここにいる死者にどう償うつもりだ?」
両腕を広げたアルビオンは、観客席にいるアンデッド達の姿を、被害者達の怒りの声を私らに知らしめてくる。私も騎士達も皆、心ではわかってる。十億を超える死者に償いきるなんて、どんだけ時間があろうと不可能やって。でも、その事実を受け入れてしまったら、私は……。
「どう償うか、それは私らもわからへん。命は誰だって一つや、死んじゃったらもう取り返しがつかへんのに……言葉で謝って、許してもらえるとは思えへんよ! 命が一つ消えるだけで、私には重すぎて、辛くて、胸の奥がねじ切れそうなぐらい苦しくて……! 償うのも、謝るのも、この痛みをちゃんと受け止めて心で理解してからじゃないと、通じるとは思えへん。だから、それがわかるまで生き延びる。今は前に進んで、正しい償い方がわかるまで、戦って生き延びなければならないんや!」
「前に進む、だと? ふざけるのも大概にしろ。お前達は一歩も進んでなどいない。その場にうずくまって、怨嗟の声から耳を塞いで、幸せな夢を見ながら閉じこもっているだけだ」
アルビオンの言う通り、私らの世界はまだ閉じていた。
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