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許されない罪、救われる心
113部分:第十一話 迎えその二
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第十一話 迎えその二

「心配されたけれどね」
「心配、ですか」
「ええ。先生や私がね」
 そうしたというのである。
「まあ暫くは入院ね」
「そうですか」
「ゆっくりしなさいよ。何かあったらすぐに呼んで」
「別に」
 如月の返答は虚ろなものだった。
「それは」
「それは?」
「何もしてくれなくていいですから」
 これが今の如月の返事だった。
「本当に」
「そんな訳にはいかないわよ。貴女怪我してるじゃない」
「それでもです」
 また看護士に告げた。
「してくれなくていいですから」
「だからそういう訳にはいかないの。怪我は決して軽くはないのよ」
「それでも」
「はいはい、そんなこと言わない」
 如月がどうしてもそう言うので話を打ち切ってきた。
「とにかくね。何かあったら呼んで」
「何かあったらですか」
「そう。すぐに来るから」
 顔を見てはいなかった。だがその声が笑っていることはわかった。それは耳でだ。だがその耳にだ。急に痛みが走ったのであった。
「痛っ・・・・・・」
「あちこち殴られたり蹴られたりしたから」
 看護士はその痛みを感じた彼女に対して言ってきた。
「時々痛むわよ」
「耳もですか」
「後遺症はないわ。けれどね」
「そうなんですか」
「無理は禁物よ」
 それはだというのだった。
「骨折も何箇所かしてるし。歩けたりはするけれど」
「命に別状はなくてもですね」
「三日も起きなかったのよ」
 このことも話された。
「軽くはないわよ」
「わかりました」
「だから何かあったらすぐに呼んで」
 また言ってきた看護士だった。
「ナースコールでね」
「ナースコール」
「枕元にあるから」
 こう言われてその枕元を見るとだった。確かにあった。
 赤く小さなボタンだ。気付いてみると目立つ。白い部屋の中に一つだけあある赤。それが目立たない筈がなかった。だからである。
「それをね」
「付ければいいんですね」
「わかったわね。じゃあそうしてね」
「はい」
 看護士の言葉にこくりと頷く。
 そしてだ。看護士は今度はこう言ってきたのだった。
「それでね」
「それで?」
「私の名前言っておくわね」
 気さくな感じでの返事だった。
「いいかしら」
「御名前ですか」
「ええ。城崎如月さんよね」
「はい」
 名前はもう知られていた。如月はどうして知られているのかは入院した時に調べられたからだと。頭の中で考えてそれで納得した。
「そうです」
「そうよね。私はね」
「私は?」
「山崎っていうの」
 まずは名字からだった。
「山崎水無っていうの」
「山崎さんですか」
「水無でいいわよ」
 また声がにこりと笑っているのがわかった。
「それでね」

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