第二十四話 奥羽仕置きその九
[8]前話 [2]次話
「どうしてもじゃ」
「悪人に思えぬ」
「そうだというのですか」
「殿としましては」
「うむ、あの者は悪人ではない」
決してというのだ。
「何か止む無きことがあってじゃ」
「ああしたことをしてきた」
「そうだと言われますか」
「殿は」
「うむ、わしはな」
実際にというのだ。
「あ奴は悪人ではない」
「しかし我等はどうしてもです」
「あの者は信用出来ませぬ」
「だから今もです」
「殿をお護りしています」
彼等が見ている獅子身中の虫である松永からだ。
「これからもです」
「そうしていきますので」
「岐阜に着いてもです」
「ご安心を」
「弾正のことはともかくお主達の忠義は受けておる」
常にとだ、そのことは確かに言う信長だった。
「有り難くな、ではわしはやはりじゃ」
「兜の緒を締められ」
「そうしてですな」
「ご自身を護っていかれますな」
「そうするとしよう」
兜を被っての言葉だ、信長は身を慎んだまま岐阜に戻るが途中富士山も見た、既に北条攻めの時に甲斐から見てだ。
今度は駿河から見るがその見事な青と白の山を見て笑みになって言った。
「何度見てもな」
「富士はよいですな」
「見事な山ですな」
「実に雄々しく美しく」
「見応えがありますな」
「全くじゃ、特に勝った後見るとな」
多くの戦いに全て勝ち天下布武をかなり固めた今はというのだ。
「余計にじゃ」
「見応えがありますな」
「見ていて惚れ惚れとする」
「そうした風に思えまするな」
「全く以てな、ではじゃ」
信長はさらに言った。
「あの山を見つつな」
「そうしてですな」
「西に進んでいきますか」
「そうしますか」
「そうするとしよう、箱根にも入るしな」
それでというのだ。
「あそこの湯にも入るか」
「それもいいですな」
「折角箱根に入るのですから」
「あちらの湯にも入り」
「戦の垢も落としましょう」
「それも楽しむか。しかし富士に箱根とはな」
この二つの場所についても言う信長だった。
「富士はともかくな」
「箱根まではですな」
「考えられませんでしたな」
「戦ばかり考えて」
「竹千代がどう越えるかを考えておった」
箱根についてはというのだ。
「それ以外はな」
「考えておられませんでしたか」
「湯のことは」
「それは」
「険しいから竹千代がどう越えるか」
彼の軍勢がだ。
「それをな」
「考えておられて」
「湯はですな」
「考えておられませんでしたか」
「うむ、しかし風呂はな」
それはというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ