第一話:茜色の少年
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かと思いながら見つめていると、隣にいるエルザがモゾモゾとしながら落ち着かない動作をして少年を眺めているのに気づいた。
(やっぱり、気になっていたのね…)
少年を見つける少し前、シスターはエルザにあることを聞かれることがあった
―――私と血の繋がった人、いないの?
その言葉で質問されたシスターと、その近くにいた神父の顔は沈む。
質問したエルザは不安そうに、縋るような目で見ていたことにシスターにとっても胸が苦しくなる。
なにせ他人とはいえこの教会で育てたり共に同じ時間で過ごしていたエルザにそう聞かれて、尚且不安そうな表情。
シスター、そしてこの教会で務めている神父にとっても確かに生きていく上でここで働いて食べて寝ることは普通だ。
しかし孤児である子供たちと一緒に働く同僚といることで絆が芽生え、苦労しながらも共に笑顔で居る時間は宝のようなものだ。
だからこそ、共に時間を過ごして家族のように思っている子が不安そうな表情をして居るか解らない自分と血の繋がった家族の存在を確かめてくる様はとても辛かった。
その気持ちを持つ故に、そしてあるか解らない希望に縋るように”ソレ”を口にしてしまった。
―――きっと居るわ、ただ時間がなくて来れないだけなのよ、きっと。
時間稼ぎとも言える発言。しかしそうしなければ目の前の綺麗な髪の色を持つ少女の心にヒビが入ってしまう。
そうならないように、そして逃げるように言葉にしてしまった。
その時のエルザの表情には不安は消えなかった。 それはそうだ、目で見て確かめていないようなこと、自分が最も疑うことをそう言われても彼女はそう簡単に受け取れるはずがなかった。
しかし、それでも今家族がいないという現実で傷ついてしまうくらいならば…心が傷つかないくらい成長する時までこの状態を継続させる方が良い。
彼女は救われるだろう、たとえ血の繋がった家族が居なくてもそれよりも強い絆で結ばれた家族ができる。
そうなることが決まっている。他の世界線では彼女は強く、騎士が身に付ける鎧のような心を持つことができた。
ただ―――この世界線は少しだけ別だ。なにせ――
「ぷはぁ〜…久しぶりに食った……ごちそうさまでした!」
―――同じ髪の色を持つ茜色の少年が、まだ妖精の女王と呼ばれてない頃の少女の目の前に現れたからだ。
似ているのは髪の色、だがそれだけで十分。
孤独を感じている幼い子供にとっては、倖だった。
村ではあまり見かけない同じ髪の色を持つ少年。
血の繋がっている可能性の少年。
少年が食べ終わった頃に、エルザはあることを思い出した。
自分と血の繋がった家
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