暁 〜小説投稿サイト〜
妖精のサイヤ人
第一話:茜色の少年
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く。
おそらく空腹で倒れた自分をこの二人が助けてくれたのだと察した。早い理解力なのは昔よくそういう物語を見たことがあるからだが…そういう物語によく裏がある作品を少年は知っている。が、生憎そこまで警戒していなかった。

もし裏があるならもう自分が意識を取り戻すことがなかったかもしれないし、取り戻したとしても奴隷とかロクなことが待っているようなところに目を覚ましていただろう。
しかし、少年は少しだけとはいえ、窓の外に目を向けて分かったことがある。
少年のいる部屋は1階だからか、外にいる人たちの様子が見えた。
重いものを持って歩く婆さんに手を差し伸べる女性、快活に笑い合う二人の男。元気に走り回る兄妹らしき二人の子供。

そんな人達の雰囲気を見て少年は部屋に来たシスターと少女に警戒心を抱かなかった。
そして安心したようにホッと息を吐いた少女と嬉しそうなシスターを見て少年は僅かに足に込めていた力を解く。

もし嫌な気配だったのなら窓から飛び出そうという魂胆を持っていたので、その必要性がないから力を解いたのだった。
そのような警戒心は前まで持つことはなかったがなぁ、と心の中で呟きがら改めてドアの前にいる女の子と女性を見つめる。

「あの…助けてくれてありがとうございます。…そして、助けてもらってアレなんですが…一つだけお願いいしてもいいですか?」

「ええ、できることなら大丈夫だけど…」

隣りにいる少女より大きいとはいえまだ子供だろう少年から丁寧口調で話しかけられた女性は少し驚きながらも返事を返す。
少年は一回だけ深呼吸し、そして真剣な目をシスターに向けて

「なにか、食べれるものをください。できるだけ多めの」

と、真顔でシスターに言うのだった


○●○●○●

「よ、よく食べるね…」

「ええ…そうね…」

少しだけ戸惑うようにシスターと少女――――エルザは鍋に入っているスープを豪快に飲む少年を見て呆然とする。
少年の身体はエルザより大きいとはいえ、まだ小さい。
その小さな身体より半分だけの大きさを持つ鍋を両手でガッシリと掴んで飲む姿に呆然するのは仕方ない。
中身のスープを飲み終わり、次は鍋と一緒に持ってきたパンを標的に変えて口に運ぶ少年。
その顔は今が一番幸せだと言わんばかりの笑顔で食事を続ける姿にシスターは何故か微笑ましさを覚える。

(きっと倒れるまで食べるものがなくてお腹が空いてたに違いないわ、こんなに食べるもの)

少年の経緯はまだ聞いていないが、おそらく最近まともな食事ができなかったとシスターは察する。
食事を口に入れる勢いとその量は毎日食事をしている人とは違うから、と。
空腹に襲われるものはこのように食べるもの
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