106部分:第十話 襲撃の後でその五
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第十話 襲撃の後でその五
「やっぱり。辛い過去は自分からはね」
「椎葉さんは言えない人なのね」
「そうだと思う。ましてやつい最近のことなら余計にね」
「そういうことなのね」
「だから」
葉月の言葉は続く。
「言えないんだと思うよ」
「そっとしておくべきじゃないかしら」
「それも考えの一つだね。けれど」
「椎葉さんは今どう思っているか」
「それは一つの問題だと思う」
葉月は真剣な面持ちで話した。
「それはどうかな」
「そうね。それはそうよね」
「うん。とにかくもうあの四人は」
「限界、よね」
「あれ以上やったら壊れるよ」
四人をだ。今は気遣っている葉月だった。
「いや、一人だったらもうとっくに」
「壊れていたわよね」
「絶交したけれど。それでも四人が壊れてもいい?」
「そんな筈ないわ」
弥生は俯いた目で答えた。
「だって。特に如月とは幼稚園の頃からずっと一緒だったのよ」
「親友だったよね」
「実は。今でも持ってるの」
「何を?」
「あの娘と一緒に撮った写真も。プリクラも」
そうしたものをだというのだ。
「それに思い出のものもね。全部持ってるのよ」
「そうだったんだ」
「捨てようと思ったことなんてないわ。一度も」
「それじゃあ」
「けれどもう少し考えさせて」
それでもだった。今すぐは無理なのだった。
「もう少しだけね」
「わかったよ。それじゃあ」
「あの時は本気で怒って絶交って言ったしどうなっても知らないって思ったけれど」
「今みたいになるとは思わなかったよね」
「如月達は。今どうして欲しいのかしら」
「助けを求めているのは間違いないね」
葉月は言った。
「きっとね」
「そうよね、やっぱり」
「誰も助けてくれないってことはわかっているけれどね」
それでもだというのだ。四人は救いの手を待っているというのだ。
「僕ももう少し考えるよ」
「わかったわ」
こんなことを話す二人だった。二人は如月達のことを考え再び気にかけてきていた。四人はその間もさらに攻撃を受け続けていた。
雨の日の夜だ。如月は一人で家に帰っていた。この日も朝から晩まで攻撃と糾弾を受けてだ。その心はもう完全に死んでいた。
虚ろな目と沈んだ顔で傘をさして俯いてとぼとぼと歩く。雨の公園の中を歩いていく。周りには誰もいない。
しかしそこにだ。誰かが来た。
「遂に見つけたぞ」
後ろからだった。剣呑な声がした。
「そこにいたのか。それならだ」
こう言ってだった。いきなり後ろから殴り掛かってきた。
殴られたその瞬間に鈍い音がした。
そこから前のめりに倒れる。水溜りになっている公園のアスファルトのところに倒れる。鞄もそこに落ちる。傘もだ。
その彼女の背中を踏みつ
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