泡沫の島 プロローグ「日常」
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を覚える。
そして彼女と目が合った。彼女は音の主が僕だと分かると見た目にも分かるほど安堵の息を吐いた。
「ごめん、邪魔しちゃったね。」
彼女、ルナは大きく首を横に振った。
「そう。僕としてはもう少し歌を聴きたかったんだけどなぁ。」
今度はさっきよりも素早く横に振る。彼女は僕達の前では恥ずかしいらしく、実際に歌を聞いたことがあるのは僕とユキだけだったりする。
後の二人(特にサヤ)は歌を聞きたいと何度もルナに食い下がったが、その度にルナに逃げられていた。
「そんな恥ずかしがること無いのに。あ、そうだ。御飯が出来たから呼びに来たんだった。一緒に戻ろう?」
ルナはこくんと頷いたかと思うとぴょんと飛び起きて僕の横に並ぶ。その小鳥のような仕草に思わず頬が緩んだ。
それに彼女は気付き、こちらを不思議そうな様子で見つめてくる。
「なんでもないよ。行こう。遅くなるとサヤ辺りがうるさいからね。」
彼女はくすっと笑う。それが嬉しくて僕も笑う。僕達は笑顔のまま、僕達は仲間たちの待つ場所へと戻っていった。
「「「「いただきます。」」」」
そして、昼食が始まった。
「ん〜!さすが、ユキちゃんの料理は絶品だね!あたしが三ツ星シェフの称号をあげるよ!」
「いぇい。さすが私。」
「…お前全然嬉しそうじゃねぇな…。あ、コラチビ!おめぇ一人で食い過ぎだ!」
「…………あれ?」
「ん?どうしたのルナ?……テーブルがいつもより綺麗?あ、確かに言われてみれば…。」
「あぅ…。シュウ君もルナちーもできればその辺スルーな方向でお願いします…。」
今日も賑やかな昼食だった。サヤが騒ぎ、カズが文句を言い、ユキとルナはそれを楽しみながらマイペースに食べていく。
これがこの島に来てからはいつも続いている。
あの”施設”にいた頃には考えもしなかった。そもそも、食事というものは単に栄養を摂取するための行為であり、
笑い合ったり味を楽しむなんてことは、”施設”の中にずっと居たままだったら知ることすら出来なかっただろう。
「……んー?おいシュウ。箸が進んでねぇぞ。てめぇはもっと食ってその細い身体に肉を付けろ。」
「黙れ筋肉ゴリラ。シュウ君は今のままが一番ベストだ。あまり変なこといってシュウ君を誑かすな。」
「ごめんごめん、ちょっと考え事してただけだから。」
「……もしやこれからのことについて、ですか?」
ユキはこちらを心配そうな目で見てきた。
「はずれ。どっちかっていうと逆だよ。ちょっと昔のこと、思い出してた。」
「…施設のこ
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