泡沫の島 プロローグ「日常」
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っとくとまたカズとサヤ辺りが揉めそうだったので、僕はその前に先手を打つ。
「…チッ。わーったよ。ったく…。」
カズはぶつぶつ愚痴を言いながら小屋の中に入っていった。なんだかんだいっても素直に言うことを聞いてくれるのでそのギャップが少し面白い。
僕は二人の方に向き直った。
「それで、僕等が居ない間何かあった?」
「何もないよー。とても平和でオールグリーン。」
「そうですね。サヤさんが料理をひっくり返したり皿を割ったりカズっちの悪口でひたすら盛り上がったりと、至っていつも通りでした。」
「……う、うぅ。」
「そ、そう。まぁそれくらいなら…。サヤ、気を付けてね。指切らなかった?」
「うぅ、問題ないっス。シュウ君の優しさが身に染みます…。」
サヤはがっくりと肩を落とした。基本的に料理をするのはユキで、サヤはテーブル拭きや配膳などを手伝う形だ。それだけでも負い目を感じている上に、それすらも失敗したので余計落ち込むんだろう。
「あ、そだ。シュウさんシュウさん。」
「ん、なに?」
「そろそろ御飯ができますので、ルナちー呼んできてくれませんか?たぶん、いつものところに居ると思うんで。」
「了解。それじゃ、ちょっと行って来るよ。」
そう言い残し、僕はその場を後にした。
向かった先は灯台から歩いて六,七分ほどのところにある湖。彼女はこの島に来てからというもの、毎日この場所を訪れている。
湖に着くとハスキーな歌声が耳に届いた。その声に誘われる様に僕は慎重に歩を進める。
少し歩いたところで、声の主を見つけた。
彼女はこちらに気付いた風もなく、大きな木の根元に座り込んで目を瞑り、歌を歌っていた。その歌姫の周りには、鳥や猫などの動物達が寄り添い、じっと彼女の歌に耳を傾けていた。
(………綺麗……だな……。)
純粋にそう思った。その容姿や声のことでもあながち間違いではないが、そういうことではなく、彼女を取り巻いているこの空間そのものが綺麗に思えた。
静かな湖。広がる青い空と白い雲。響き渡るハスキーボイス。木を背もたれにして歌う少女。小さな観客たち。
それは、まるでこの風景自体が切り取られた一枚の絵画のような美しさだった。
そのままずっと耳を傾けていたい衝動に駆られたが、お腹を空かせた仲間たち(特にサヤ)に愚痴を言われたくないので仕方なく彼女に歩み寄った。
数歩歩いたところで、がさ、という音を立ててしまう。彼女は驚いて歌を止めてしまい、動物達は素早くその場から離れていった。
自分がこの空間を壊してしまったことに少しの罪悪感
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