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蒼穹のカンヘル
三十四枚目
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夜9:00

「本当に来ちゃったよ京都」

しかも転移で。

「どうしたの篝?」

と俺を抱き抱えたヴァーリが言った。

「なんでもねぇよ…」

「にゃー?」

「お?どうしたんだい黒猫ちゃん?」

ジュスヘルが抱く黒歌が鳴く。

「じゃ、旅館行くぞ。篝、ヴァーリ、ジュスヘル、黒歌ついてこい」

アザゼルが先頭をあるきだす。

「ちゃんと認識結界張ってあるよな?な?」

「心配しなくてもお前の翼と尻尾は見えてないよ」

ならいいのだが…。



旅館に着くと、先頭がアザゼルからジュスヘルに変わった。

「失礼するよ女将」

「おぉ?ジュスヘルじゃないかぁ!何百年ぶりだい?」

「六百年かな?」

と旅館の女将(雪女…?)とジュスヘルが会話を始めた。

「それで今日はどんな用向きなんだい?」

「ちょっと堕天使の子供が大変でね。八坂の力を借りようと思ったのさ。
あの狐には貸しが幾つかあったからね」

そう言って、ジュスヘルが俺を示した。

「どうも。姫島篝といいます」

「これは確かに大変だ」

女将はカラカラと笑った。

「ま、八坂様がなんとかしてくれるから、坊やは安心しなさい」

「はい」











「失礼するよ八坂」

「ジュスヘル…久しいのぅ」

お座敷に通され、ジュスヘルが戸を開けると、先方は先に来ていたようだ。

中から声が聞こえる。

「八坂、お前には幾つか貸しがあっただろう?」

「何時の話だと思っておる…」

「まぁ、悪い話ではないさ。篝、入れ」

ジュスヘルに呼ばれ、お座敷に入る。

先方は、狐だった。

それも九尾。白面金毛九尾御前だ。

「お初にお目にかかります。私は…」

「ジュスヘル?」

「なんだ八坂」

「まさかこの混沌の面倒を見ろという話ではあるまいな?」

「変化を教えてやって欲しい。こいつは家族の為にその身を差し出せる奴だ」

「ふむ……」

「それにだ」

「む?」

「お前の娘には同年代の友など居るまい?
ちょうど良いと思うが?」

「そうくるかジュスヘル…」

八坂さんが俺を見た。

見られた。視線で貫かれた。

「名を、名をなんという?」

「姫島篝です」

「姫島?姫島…面白い。よかろう変化じゃな?」

面白い?何が……あぁ…『姫島』だもんな…

「一応、注釈を。私は姫島本家に連なる者ではありません。
むしろ、本家とは敵対しています」

「で、あろうな」

八坂さんはジュスヘルに視線を移した。

「総督は来ておるのか?」

「アザゼル」

「ほ
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