第三話 剣士とビーター
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イバーも黙って俺の言葉を聞いている。
「俺はベータテスト中に他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知ってたのは、ずっと上の層でカタナを使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知っているぜ、情報屋なんか問題にならないくらいな」
「……なんやそれ…そんなんベータテスターどころやない。もうチートやチーターやろそんなん!!」
周囲から、そうだ、チーターだ、ベータのチーターだ、という声が幾つも湧きあがる。それらはやがて混じり合い、“ビーター”という奇妙な響きの単語が俺の耳に届く。
「……“ビーター”、良い呼び方だなそれ」
俺はにやりと笑い周囲を見渡しながらはっきりとした声で告げた。
「そうだ、俺は“ビーター”だ。これからは元テスターごときと一緒にしないでくれ」
俺は自らに烙印を押した。これから元ベータテスターは二つのカテゴリに分かれる。《素人上がりの単なるテスター》と《情報を独占する汚いビーター》に。
新規プレイヤーの敵意は全て、俺“ビーター”に集まる。仮に元テスターだとばれてもすぐに目の敵にされることはないであろう。
俺は今まで装備していたコートの代わりに、ついさっきボスからドロップしたばかりの装備を設定する。艶のある漆黒の革でできた丈の長いコートは、膝下まで達している。
「二層の転移門は、俺が有効化しといてやる。この上の出口から主街区まで少しフィールドを歩くから、ついてくるなら初見のMobに殺される覚悟しとけよ」
そう言い、ボス部屋の奥の小さな扉へと向き直り歩き出す。
狭い螺旋階段をしばらく上ると、再び扉が出現した。
その扉に手を掛け外へと出ようとする。
「待って」
高い声に呼び止められた。振り向くとそこには先ほどの女剣士、アスナがいた。
「あなた、戦闘中にわたしの名前呼んだでしょ」
「ご、ごめん。勝手に呼び捨てにして……それとも、読み方が違った?」
「わたし、あなたに名前教えてないし、あなたのも教わってないでしょう?どこで知ったのよ」
「は?」
思わず間抜けた声を出してしまう。
「このへんに、自分の以外に追加でHPゲージが見えてるだろ?その下に、何か書いてないか?」
「え……」
彼女はそう呟くと示された場所を見る。
「き……り……と。キリト?これが、あなたの名前?」
「うん」
「なぁんだ……こんなとこに、ずっと書いてあったのね……」
この時、俺はアスナが初めて笑ったのを目にした。
戦闘中ではあまりよく見れていなかったが、横目で見てもかなり綺麗な少女だ。
「君は強くなれる。だから……もしいつか、誰か信頼できる人にギルドに誘われたら、断るなよ。ソロプレイには絶対的な限界があるから……」
「なら……あなたは…?
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