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永遠の謎
99部分:第七話 聖堂への行進その六

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第七話 聖堂への行進その六

「私が舞踏会に出るというのは」
「お互い様です」
 王は皇后のその心を気遣いこう述べた。
「それは」
「貴方もだというのですね」
「そうです。私達はそうした意味でも同じなのでしょう」
 また皇后に述べたのだった。
「そうしたところは」
「そうですね。私達は王家に生まれながら」
「それでいてですね」
「翼を持っています」
 皇后は上を見上げた。そこには無限の青い空がある。
「そしてその翼で空を」
「そうですね。私達はそうして空を羽ばたきます」
「それが許されないことだとしても」
「そうせざるを得ません」
 二人はお互いを理解していた。だがそれを理解する者は少なかった。そのこともまた二人を悲しみの中に追いやっていたのだった。
 その舞踏会にだ。王が出ると聞いて周りの者達は驚きを隠せなかった。
「陛下がですか」
「舞踏会に出られますか」
「そうされるのですね?」
「まことですね?」
「私は嘘は言わない」
 王は礼装に着替えていた。その姿で彼等に告げていた。
 黒いタキシードが実によく似合う。黒と白、そして蝶ネクタイがだ。彫刻の如き姿を王に与えている。いや、王が礼装に与えているのだろうか。
 その王がだ。今周りの者達に話していた。舞踏会への準備の中で。
「決してな」
「だからですか」
「そうだ。そしてだ」
「はい、そして」
「何かあったのでしょうか」
「私も出て」
 そうしてだというのである。
「あの方も出られる」
「皇后様もですね」
「そう仰るのですね」
「そうだ。それを見てだ」
 どうかとだ。王は話していくのだった。
「おそらく誰もが言うのであろうな」
「何とですか」
「それは」
「珍しいとな。違うか」
 彼等に目をやってだ。そのうえで告げた。
「私達が共に舞踏会に出ることがだ」
「それは」
「何といいましょうか」
 事実であるだけにだ。彼等は答えられなかった。返答に窮する。
「あの」
「つまりは」
「よい。事実なのだからな」
 そしてだった。王は自ら言った。
「それもまたな」
「あの、それは」
「ですから」
「いい訳はいい」
 それは言わせなかった。王はそれは好まなかった。それで彼等にあえて言わせなかったのだ。お互いに不愉快になるのを避ける為に。
「それではな」
「は、はい」
「それでは」
「私も。私だけでは出なかっただろう」
 ここでもだった。王は遠い目になっていた。
「おそらくな」
「あの方がおられるからですか」
「エリザベート様が」
「そう仰るのですね」
「そうだ。あの方がおられてこそだ」
 それでだというのである。

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