98部分:第七話 聖堂への行進その五
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第七話 聖堂への行進その五
彼はまた。皇后に話した。
「では今は」
「はい、今は」
「舞踏会ですね」
微笑んでだ。皇后にこう話したのである。
「二人の皇帝陛下をお招きした」
「そうですね。ロシア皇帝もです」
「今皇帝は三人ですね」
王はふとこんなことを話した。
「この欧州に」
「オーストリア、ロシア、そして」
「フランスの」
この三国がであった。皇帝を戴いているのだった。
「三人ですね。そのうちの二人ですね」
「皇帝は本来は」
ふとだ。皇后は話してきた。
「一人だと言われていますね」
「中国ですか」
東の長い歴史を持つ大国だ。王も皇后もその国の名前を知っていた。
「あの国ではそうでしたね」
「今は清といったでしょうか」
「はい、国の名前はそれです」
満州族の国だ。今その国は困難の中にあった。だが王はそのことについては深くは知らなかった。その困難をよいものとは考えていなくともだ。
「あの国では皇帝は常に一人です」
「そうなのですね」
「本来は欧州でもです」
この欧州でもだと。王は話した。
「ローマ皇帝だけが。皇帝なのですから」
「しかしそれが東西に別れ」
「東ローマ帝国はロシアです」
実際にロシアはこう主張している。ビザンツ帝国からの流れなのだ。
「そしてオーストリア皇帝は」
「はい」
「西ローマ帝国皇帝でしたね」
彼等はそれだというのであった。
「そうでしたね」
「ええ、そうなります」
「神聖ローマ帝国はなくなりました」
ナポレオンによってだ。そうなってしまったのだ。
「しかしオーストリアは健在です」
「ですから。陛下は」
「西ローマ帝国皇帝になりますね」
「そういうことです」
「フランスはナポレオン=ボナパルトの流れを汲んでいます」
最後のフランスはそうだというのであった。
「その三人の皇帝が今欧州にいます」
「そしてそのうちの二人が」
今このフランケンにいるというのである。
「思えば。これも縁ですね」
「そして舞踏会にですね」
「そういうことになります」
「そして貴方は」
皇后はまた王に対して問うた。
「どうされるのですか、この舞踏会」
「出るかどうかですね」
「そうです。どうされますか」
「舞踏会の類は好きではありません」
王は少し困った様な笑みを見せてまずはこう答えた。
「ですが」
「しかしですか」
「貴女も出られますね」
皇后のその絵画の如き顔を見てだ。問うたのであった。
「舞踏会に」
「はい」
王は皇后のその言葉に静かに頷いた。
「そうさせてもらいます」
「わかりました。それでは」
「勿論私もです」
「出られますね」
「珍しいでしょうか」
少しはにかんだような笑み
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