89部分:第六話 森のささやきその十二
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第六話 森のささやきその十二
「私は血は好まない」
「だからですか」
「戦争は」
「赤十字というものができたそうだが」
「確かスイス人が作ったのですね」
「名前は確か」
周りの者達は記憶を辿りながらだ。この名前を話した。
「アンリー=デュナン」
「そういいましたが」
「戦場であろうとも」
王はその名前を聞いたうえでさらに言っていく。
「傷ついた者を助けるそうだな。敵味方の関係なく」
「酔狂といいますか」
「それとも妄想とも言いますか」
「荒唐無稽な話です」
周りの者達はその考えに対してこう述べていく。有り得ない話だというのだ。
「その様なことをして何になるでしょうか」
「戦場で人が死ぬのは当然のこと」
「それなのにです」
「いや、それは違う」
王はだ。彼等のそうした一連の言葉は否定するのだった。
そのうえでだ。彼はこう話した。
「例え戦場であろうともだ」
「戦場であろうとも」
「どうだというのでしょうか」
「死ぬ者は最低限でいい」
こうだった。己の考えを述べるのだった。
「どの軍にいる者であろうともだ」
「それが正しいというのですか」
「陛下は」
「少なくともだ」
真剣そのものの顔でだ。彼は話すのだった。
「私はそう思う」
「そうなのですか。誰であろうとも」
「戦場で傷ついた者を救う」
「その考えが」
「理想に過ぎないかも知れない」
王は一旦言葉を置いた。
「だがそれでもだ」
「それを現実にできる」
「赤十字のその考えを」
「そうだと」
「理想だと思い、夢だと思い」
王はその言葉を続けていく。やはり遠くを見る目でだ。語るのであった。
「そのままで終わっては何にもならないのだ」
「ではやはり」
「赤十字もまた」
「現実のものにできると」
「そうするべきだ。だからだ」
王はだ。ここでまた述べた。己のその考えを。
「私はその考えに賛同しよう」
「赤十字に」
「そう仰るのですね」
「その通りだ。公に言おう」
王が公に言う、このことは非常に大きかった。国の主が言うとなると私のことでも世に広まる。それが公になればだ。余計にそうなることだった。
それを踏まえてだ。彼は今こう言ってみせたのである。
そこまで言ったうえでだ。王はまた話した。
「ミュンヘンに戻り次第すぐにな」
「そうされますか」
「赤十字に対して」
「誰であろうとも」
王の言葉は。ワーグナーを語る時の如く熱くなっていた。そこにもまた彼の信念があるのだった。
「救われるのならば救われるべきなのだ」
「誰であろうとも」
「例え敵であろうとも」
「そうだ。戦争は忌むべきものだ」
何処までもだった。王は戦いを嫌った。
「そこにはあらゆる醜いものがあ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ