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永遠の謎
88部分:第六話 森のささやきその十一

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第六話 森のささやきその十一

「私は軍は」
「率いられないか」
「すいません」
 こう皇帝に答えるのだった。
「それだけはです」
「そうか。駄目か」
「ただ。このことは約束します」
 王はこう皇帝に話した。
「バイエルンはオーストリアにつきます」
「それはだな」
「はい、必ず」
 皇帝に話す続ける。
「約束しますので」
「ならいい」
 皇帝もそれを聞いてだ。納得した顔で頷く。
 そうしてだ。彼に対してあらためてこう話すのだった。
「バイエルンがついてくれることは大きい」
「そうですか」
「これでプロイセンに対抗できる」
 皇帝の声は確かなものだった。そうしてであった。
 そこにだ。あるものも見ているのだった。
「オーストリアが勝てばだ」
「どうされますか、その時は」
「バイエルンに対して多くのものを約束しよう」
 これが皇帝が今見ているものだった。
「オーストリアの盟友としてな」
「盟友ですか」
「そうだ、我が国のだ」
 まさにそうだというのである。
「それを約束しよう」
「有り難いことです。それでは」
「頼んだぞ」
 明らかにだ。願う言葉であった。
「戦いになればな」
「はい、それでは」
 こうした話をした。しかしであった。
 王にとっては戦争のことは面白くなかった。それで皇帝と別れるとだ。浮かない顔でいてだ。自分に用意された部屋で音楽を聴くのだった。その曲は。
「今日はモーツァルトがいい」
「それですか」
「ワーグナーでなくですか」
「今はそれを聴きたい」
 こう周りに話すのであった。
「だからだ。頼む」
「はい、それでは」
「今から」
 すぐにピアノが奏でられる。王はソファーに座りその曲を聴く。モーツァルトの軽快な、天使の調べの如き曲を聴きながらだ。彼は言うのであった。
「オーストリアの音楽はいい」
「ウィーンは音楽の都です」
「そしてこのモーツァルトもです」
「その音楽があればだ」
 王はだ。ここでこうも言うのであった。
「戦争なぞしたくもなくなるが」
「そう思われますか」
「陛下は」
「戦争が何を生む」
 王は周りの者にこう問うた。
「一体だ。何を生む」
「勝利を」
「そして栄光を」
「どちらも戦争でなくとも手に入れられる」
 しかしなのだった。王は挙げられたどちらについてもこう言い返したのだった。
「外交。政治でだ」
「それができると」
「そう仰るのですね」
「そうだ。戦争は血生臭い」
 王は憂いに満ちた顔で述べた。

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