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永遠の謎
81部分:第六話 森のささやきその四

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第六話 森のささやきその四

「エリザベート様もご一緒です」
「皇帝陛下と」
「いいことだ。確かにシシィには旅が必要だ」
 肉をナイフで切る。濃厚な白いソースがその切られた間に入る。
 それを口にしてだ。肉とソースの絡み合いを楽しみながらまた言うのだった。
「しかしだ」
「しかしですか」
「そうだ。少しは陛下と一緒にいないとだ」
「いけません」
「それもまたシシィの為だ」
 こうだ。従姉を気遣って話すのだった。
「皇帝陛下と共にいることもだ」
「皇帝陛下もエリザベート様も愛し合われています」
「それは確かです」
 侍従達がこう話していく。それは彼等も知っていたのだ。
「ですが。ハプスブルク家、ウィーンはあまりにも慣わしが多く」
「格式が高いあまり」
「それはシシィにはよくない」
 ハプスブルク家のその格式がだというのだ。
「合わない。思えば因果なことだ」
「因果ですか、それは」
「そうだと仰るのですか」
「その通りだ」
 見事なガラスのグラスを手に取った。そのうえで口の中に入れてだ。ワインの芳香と味覚を味わいながら侍従達に話すのだった。
「二人は愛し合っていてもだ」
「周囲には馴染めない」
「そうなのですね」
「夫婦とはそういうものなのか」
 王は遠い目で話した。
「所詮は。男女の愛なぞ」
「いえ、愛はです」
「男女のものではないのですか」
 侍従達は王の今の言葉には怪訝な顔になった。
「だからこそ成り立つのではないのですか」
「違うのですか」
「それだけではないのではないのか」
 王はだ。今度は懐疑的な顔になった。
「私は。少なくとも」
「陛下は」
「どうなのですか」
「いや、いい」
 それ以上は言わなかった。そうしてだ。
 食べながらだ。彼はまた言った。
「では今からシシィのところに行こう」
「はい、それでは」
「今より」
「私にとってもいいことだ」
 王はだ。微笑んで述べた。
「シシィに会える。久し振りにな」
「お元気だとのことです」
「顔色もいいそうで」
「鳩はどうして鳩か」
 王の言葉だ。
「空を飛んでのことだ」
「空を飛ぶからことですか」
「だからですか」
「しかし時には休むことも必要なのだ」
「それが今ですね」
「陛下が向かわれる場所ですね」
「その通りだ。鳩は今安らぎの中にいる」
 こう話していく。
「鷲はその前に行こう」
「それでは陛下、今から」
「どうされますか」
 侍従達は肉を食べ終えた王に対して問うた。
「新しいワインをお持ちしましょうか」
「そしてデザートは」
「ワインはもういい」
 それはというのだった。

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