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永遠の謎
79部分:第六話 森のささやきその二
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第六話 森のささやきその二

 彼は冷静にだ。牡蠣を食べながら言った。
「バイエルンはカトリックだ。ドイツの南部はカトリックの牙城の一つだ」
「そしてバイエルンこそがその中心にいます」
「結果として我がプロイセンを嫌っている」
 それ故にである。
「それもかなりな」
「だからこそ。バイエルンは」
「オーストリアにつくな」
「しかもです」
 モルトケもまた、だった。その言葉を続けるのだった。
「オーストリアの皇后は」
「ヴィッテルスバッハ家の方だからな」
「そうしたことも考えますと」
「バイエルンはオーストリアにつく」
 ビスマルクはここでは断言した。
「間違いなくな」
「その通りです。その場合は」
「バイエルンをどうするか」
 それが問題であった。ビスマルクはそれについても考えていたのだ。
「戦争はするからにはだ」
「短期で終わらせるべきです」
「長引いては誰も得をしない」
 つまり短い戦争だからこそだというのだ。意味があるというのだ。
「全くな」
「はい、戦争はすぐに終わらせないと」
「しかしだ。オーストリアの軍は旧式とはいえ、だ」
 既にだ。オーストリア軍についても調べているのだった。
「数は多い」
「戦争は数です」
「少し間違えれば長期戦になる」
「オーストリアとの戦争を短期に終わらせる計画は既にできています」
「それもか」
「はじめれば。すぐに」
 モルトケは鋭い目でだ。ビルマスクに対して言い切ってみせた。
「それができます」
「早いな。そこまでか」
「ただしです」
 ここでだった。モルトケは言葉を限ってきた。そのうえでの言葉だった。
「オーストリアと戦う計画だけです」
「オーストリアだけか」
「必要な戦略だけを考えています」
 そしてなのだった。こうも告げたのであった。
「あくまで」
「面白い話だな。そこまでか」
「バイエルンについてはです」
「何の計画も立てていないな」
「その通りです」
「そうだ。それでいい」
 そしてだった。ビスマルクもこう言うのであった。
「あの方は全てをわかっているのだからな」
「情勢を全てですね」
「そういうことだ。あの方は決して愚かではない」
 ビスマルクはここでも王に対して語る。そしてここでもだった。
「むしろ非常に聡明な方だ。政治もわかっておられる」
「政治もまたですね」
「それがわかっている者は少ない」
 ここでもこう言う彼だった。
「清らかなる愚か者なのだ」
「清らかな愚か者ですか」
「そうだ。愚かだが愚かではない」
 そうだというのだった。
「あの方はな」
「ではバイエルンは」
「動かない」
 ビスマルクは言った。
「オーストリアについてもだ」
「ですね。ですからオースト
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