あの艦隊の提督と白露型
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立ちを感じた。
「提督?」
不機嫌そうな気配を感じたのか窺うような顔で声をかける村雨に、提督は何でもないと返事をする。
「そう? ならいいけど。ところで提督、本格的に夏になったら海に行かない?」
唐突な話題転換。
どうしたことかと思った提督が村雨の方に目を向けると、妙にぎこちない笑顔を浮かべていた。
「みんなで、お弁当作ってクーラーボックスに入れて。ペットボトルに麦茶をいれて、凍らせて。スイカも持って」
無駄な心配をさせたというか、不安にさせたのだと気付いた提督は、村雨の提案に乗ってあげることにする。
「それじゃあ、いつがいいかしら。スケジュールは──」
村雨は席を立って提督の横まで来て、予定表と気象図を覗き込んだ。
と、軽快な足音が近づいて来たかと思ったらノックも無しに執務室の扉が勢いよく開かれた。
「ただいまっぽーい!」
白露型の四女、夕立が任務を遂行して帰還した。
夕立は早速、提督に飛びつこうとしたのだが、足元に置いてあった何かに気づいて足を止める。
そこには脱いだばかりらしき村雨の衣服。
「どうかしたの?」
そして目の前の村雨は、しっとりと髪を濡らして提督の側に侍っている。
「事案っぽい!」
「夕立? 無線機を置きましょ?」
騒ぐ夕立を宥める村雨。その様子を眺め、今日も平和だなぁなどと考える提督だった。
陽射しが貫く夏。波風が穏やかな砂浜にて。
提督はビーチパラソルの作る日陰で荷物番をしていた。
波間で遊ぶ艦娘達を眺めながら、こんなもんだよなと呟く提督。その背後から誰かの足音が近付いてくる。
「あら、バレてしまいましたか」
波に合わせて近寄っていたのは白露型駆逐艦の艦娘、海風。
「砂浜は暑いですね。これ、どうぞ」
彼女は持っていた炭酸飲料を提督に渡し、隣に腰を下ろした。
泳がないのかと提督が尋ねると、海風はもう泳いだ後だと言う。その割には日に焼けたようには見えないが。
「日焼けですか? 日焼け止めを塗っています」
そういえば、兵隊が日焼け止めとワセリンは必需品だと言っていたなと提督は思い出した。
日焼け止めは首や顔に。ワセリンは真鍮部品の保護や股擦れの防止に。
海風達艦娘もワセリンを塗っているのだろうか。
妙な想像をしてしまい、提督は頭を振った。
「提督?」
怪訝そうな顔をする海風に問題無いと答え、提督は海を眺めた。
波打ち際から白露型の五女、春雨が提督に手を振って呼ぶ。
「司令官ー。ビーチバレー、一緒にしませんかー?」
荷物をどうしたものかと思っていると、海風が提督に優しく微笑んだ。
「提督。荷物は私が見ていますから、どうぞ楽しんできてください」
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