あの艦隊の提督と白露型
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いに負け、五月雨は提督を巻き込んで倒れた。
押し倒した形の五月雨と、押し倒された形の提督の視線が交差する。
「あの、すみません。えっと」
ガチャリ。音がしてまたもや塔屋の扉が開いた。
「きょーはお洗濯日和ーラララ──あ」
白露型の三女、村雨がタイミング悪く洗濯籠を抱えて屋上に現れた。
村雨はクルリと向きを変えて去ろうとする。
「お邪魔しちゃいましたかー、そうですかー」
「違うの村雨姉さん! 誤解なの!」
「5階? ここ屋上ですから」
「だから違うから!」
村雨を追って駆けていく五月雨を見送り、提督は無事だったタッパーを拾って昼食を再開するのだった。
夏の走り。執務室で書類をやっつけていた提督は、開け放たれた窓から入る日差しが翳り、風が生温くなったのを感じ慌てて窓を閉めた。
パラパラ、パラパラと俄雨が窓を叩く。
しばらくして雨は止み、提督が再び窓を開けるとややヒンヤリとした空気が室内に入ってくる。
単調な書類仕事の気分転換にはなったかと提督が外を眺めていると、執務室のドアがノックされた。
「入るわよ」
一言かけて執務室に入って来たのは白露型駆逐艦の艦娘、村雨だ。
おつかいに出していたのだが雨に降られたのだろう、髪先やスカートからポタポタと水滴を垂らしている。
「急に降りだすんだから、もうっ」
タオルで頭を拭き始める村雨に、提督はお疲れ様と声をかけ、シャワーでも浴びて着替えて来たらどうかと言う。
「そうしたいけど、いいのかしら」
お仕事は大丈夫なのかと心配する村雨に、大丈夫だと答える提督。書類は量こそ多いが、そんなに複雑な内容ではない。
「それじゃ、ちょっと行ってきまーす」
そう言って執務室から出て行こうとした村雨だが、ドアのところで振り返る。
「覗いちゃだめよ?」
わざわざ覗きなんてするものか。提督は肩を竦めて呆れ顔をして書類に向き直った。
村雨が戻って来たのは30分ほどしてからだった。どうしたことか、いつかのように洗濯籠を抱えている。
「洗濯機が全部使われてるんだから仕方ないじゃない」
秘書艦席に着きながら言う村雨。
脱いだ服を洗おうとしたが洗えず、部屋に持って戻る時間を惜しんでそのまま持って来たらしい。
しかし執務室に置かれても困るのだが。特に提督の精神衛生上よろしくない。
村雨は脱いだ下着など見られても平気なのかと提督は疑問に思う。
「うーん、提督にはもっと色々見られちゃってますし?」
村雨の答えを聞いて提督は複雑な気分になる。
村雨の色々──中大破した姿など──は資料として他の人間も見ている知っている。それは目の前の村雨とは別の村雨の資料なのだが、提督は僅かな苛
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