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あの艦隊の白露型の歳時記
あの艦隊の提督と白露型
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、桜吹雪の中に山風が消えてしまいそうに見え、提督は咄嗟に手を伸ばす。
 山風の身体は提督の腕の中に収まった。
 夜風から守るように抱きしめられ、提督の体温が山風の身体に伝わる。

「あり、ありがと」
 山風は抱きしめ返さず、しかし提督の服の裾をぎゅっと握りしめた。

 翌朝
 執務室に白露型の次女、時雨がやって来た。

「提督、おはよう。昨夜は珍しく、山風が部屋に帰らなかったんだ。1人で眠るのは嫌なはずだから、他の誰かと一緒だったんだろうけど」
 時雨は喋りながら丁寧に畳まれたハンケチーフを取り出し、提督の前で広げる。
 ひらりはらりと桜の花弁が落ち、長い緑色の髪が垂れた。
「提督の仮眠室で見つけたモノだよ。何がどうなっているのか僕に分かるように説明してもらいたいな」

 やましい事など何も無いのだが、どうしてか提督はごめんなさいと言って平伏するのだった。
 
 
 
 
 梅雨の晴れ間が見えたある日のこと。
 提督は久しぶりの晴天に誘われて、昼食をタッパーに詰め庁舎の屋上へと向かう。
 眩しいが熱くはない日差しを浴び、提督は良い気持ちで塔屋から持ち出したデッキチェアに腰掛け、昼食を摂り始めた。

 そこに、屋上への扉を開けて洗濯物が飛び出して来る。
 いや、洗濯物の上から僅かに、下からは甲板にするくらい長い青い髪と細い脚が覗いている。洗濯物を大量に抱えて白露型の艦娘、五月雨が飛び出して来たのだ。

「提督! お疲れ様です」
 デッキチェアに腰掛けている提督に気付いた五月雨はぺこりと頭を下げ、提督がそれに手を振って返すといそいそと洗濯物を干し始める。
 
「提督はこちらでお弁当ですか」
 屋上に張られているロープに洗濯物を干しながら五月雨は提督に話しかける。その視線が提督の持つ箸に摘まれた卵焼きへと集中した。

「ゴク……」
 五月雨が喉を鳴らす。
 まあ、そうなるなと思って提督は卵焼き(鳳翔と瑞鳳の特製)を一切れ差し出す。
「い、いいんですか??」
 言いながら駆け寄って来た五月雨に卵焼きを食べさせながら、提督はある事に気付いて目を逸らした。

「提督?」
 五月雨は差し出された卵焼きを咀嚼しながら、明後日の方向を向いた提督の頬がやや赤い事に気付く。
 そして考える。
 なぜ、自分は提督に「あーん」としてもらったのか。 ──両手が塞がっているからだ。
 なぜ、両手が塞がっているのか。 ──それは両手に────

「あわぁぁああ!」
 五月雨は慌てて手の中にある薄布、特に目立つ赤白ストライプ模様の物体を背に隠して立ち上がろうとした。しかし、その時都合よく風が吹き、ロープに引っ掛けられていただけのシーツが飛んで五月雨の背後から覆い被さる。
「ひゃっ!」
 シーツの勢
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