667部分:エピローグ 至高の救いその五
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エピローグ 至高の救いその五
「そうだな」
「はい、そうです」
その通りだとだ。老騎士が王に答える。
「その通りです」
「卿がいてそうして」
「私がいます」
騎士もここで名乗る。
「私の名は」
「ローエングリン」
騎士は清らかな微笑みと共に名乗った。
「これが私の名です」
「そうだな。卿が私の永遠の導き手だった」
「そして私達以外にもです」
「聖杯城の主だった者もだな」
「先王もおられます」
「アムフォルタス王か」
「先王陛下もおられますので」
見ればだ。長身で豊かな髭の者もいた。その彼がだ。
王の前で静かに片膝をつく。そしてその男にもだ。
王はだ。静かに微笑み告げた。
「この槍が貴方の傷を癒しました」
「その通りです」
「そして私はこの城の主となりました」
「では。これからは」
「はい。私が務めを果たします」
聖杯城の王、その務めをだというのだ。
「お任せ下さい」
「では。これからは」
先王もだ。王に一礼しそのうえでだった。
王をその中央に導く。王はだ。
騎士に槍を預け壇の前、聖杯の前に来た。そして。
その杯を手にしてだ。両手で上に掲げ。
それをゆっくりと回して掲げその光で広間を満たし。
暫くそうしたうえでだ。杯を壇の上に戻す。
それからだ。こう言うのだった。
「私は今私のいるべき場所に来たのだ」
こう言ったのである。王はこれより永遠の玉座に座るのだった。
バイエルン王ルートヴィヒ二世については今も様々なことが言われている。この王のことは多くの者が知っているが殆どの者が王が何を求め何を愛していたのかわからない。そうした意味で王は永遠の謎である。だがそれは無気味な謎でなく美しく神秘的な謎である。その王の求めていたもの、愛していたものについて考える、このこともまた美しく神秘的なものであるならば。王は人々にこのうえない贈りものを残したことになる。
今ノイシュバンシュタイン城にホルニヒがいた。その彼がだ。
共にいる友人達にだ。こんなことを話していた。
「この城が今ではバイエルンの宝ですね」
「はい、今やです」
「そうなっていますね」
友人達もその通りだと彼に答える。
「この城は遂にです」
「そうなりました」
「そして陛下も」
彼が敬愛し、この城を築いた王もだというのだ。
「永遠の方になられました」
「そのことについてどう思われるのでしょうか」
「貴方は」
「喜びを感じています」
微笑みだ。彼は答えた。
「理解されなかった陛下が理解しようと考えられること」
「そのことがですか」
「喜びなのですか」
「はい、だから私は喜びを感じています」
まさにそうだというのだ。
「陛下は。永遠の存在になられたのです
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