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永遠の謎
661部分:最終話 愛の死その十二
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最終話 愛の死その十二

「それへの祝福です」
「そうなのですか」
「ではです」
 王は救えなかった。それでもだ。
 ホルニヒは満ち足りた気持ちでいてだ。そのうえでだ。
 同志である彼にだ。顔を向けて言ったのだった。
「一旦エリザベート様の下に戻りましょう」
「そうですね。ここにいても仕方がありません」
 目的は果たせなかった。そしてこれ以上ここにいて見つかればだ。
 彼等の素性がわかり外交問題になる。それを避ける為にだ。彼もホルニヒに同意した。
 そしてだ。そのうえで言うのだった。
「ではこれで」
「はい、戻りましょう」
 こうしてだった。彼等は皇后の下に戻った。そして皇后に一部始終を話しビスマルクにも電報を送った。話を聞いた皇后はまずは静かにだ。こうホルニヒに告げた。
「わかりました」
「この話を信じて頂けますか」
「はい」
 またしても静かに答える皇后だった。
「貴方は嘘を吐く方ではありませんから」
「有り難きお言葉」
「それにです」
「それに?」
「あの方のことを考えれば」
 王のだ。それをだというのだ。
「信じられない話ではありません」
「陛下のことをですか」
「あの方はああなる運命だったのです」
 その王の話もするのだった。
「彼に導かれて。あの世界に入る」
「あの世界とは」
「ワーグナー氏の歌劇にある世界です」
 そこにだというのだ。
「そこに赴かれたのです」
「ワーグナー氏の世界ですか」
「おわかりになられますね」
 ここまで話してからあらためてホルニヒに問うた。皇后は今彼の目を見ていた。
 目と目が合う中でだ。ホルニヒも答えた。
「あの。パルジファルのですか」
「そうです。あの世界にです」
「あの方は入られたのですか」
「その通りです」
 皇后は静かにホルニヒに話す。
「そうなられる運命だったのです」
「そうだったのですか」
「そうです。私はわかっていたのですが」 
 王の運命をだ。しかしだった。
 ここで皇后は遠い目になりだ。そのうえでだ。
 ホルニヒにだ。話すのだった。
「希望を見たかったのです」
「希望ですか」
「私個人の希望をです」
 こう言ったのである。
「あの方にこの世に留まって欲しかったのですが」
「あの方があの世界に入られることをご理解のうえで」
「はい、そうだったのです」
 このこともホルニヒに話したのである。
「ですが。運命は変えられませんでしたね」
「そうなりましたか」
「では。私は」
 そしてだというのだ。皇后は。
「この場を離れます」
「ウィーンに戻られますか」
「はい、これ以上ここにいては怪しまれますし」
「そうですね。ミュンヘンでも気付かれるかと」
「目的は達せられませんでした
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