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永遠の謎
655部分:最終話 愛の死その六
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最終話 愛の死その六

 彼はだ。同行しているベルリンの者の一人にだ。こう言ったのだった。
「あの方は夜を愛しておられますが」
「そのことですか」
「はい、それが今よくわかります」
 そうだというのだった。
「夜は決して闇ではなく」
「それとは違いですか」
「澄んで清らかなものです」
 黄色い月もあった。その淡い光も見つつ言う彼だった。
「そしてそこにこそ全ての美の源があるのです」
「夜にですか」
「はい、この夜にです」
 まさにだ。その夜にだというのだ。
「それがあります」
「あの方が夜に過ごされているのは知っていましたが」
 ベルリンの者はそのホルニヒにこう答えた。
「しかしです」
「貴方は夜は」
「夜は魔の時と言われていました」
 キリスト教の世界ではだ。そうなっていることだった。
「ですからいい印象はありません」
「左様ですか」
「吸血鬼や人狼が跳梁する時」
 どちらもゲルマンの世界でもよく囁かれている存在だ。特に狼にまつわるものは。
「幼い頃よりそう聞いていましたので」
「だからこそですか」
「はい、夜は好きではありません」
「多くの方はそうですね」
 それもその通りだとだ。ホルニヒは彼の言葉を認めた。その夜の中の森。王の城を覆うその深い静かな森の中を進みつつ述べたのである。
「夜についてはいい思いはありません」
「しかしあの方はですか」
「はい、あの方は違います」
 王はだ。そうだというのだ。
「あの方はこの夜にそれを見出しておられるのです」
「だから夜におられたのですか」
「はい、そうです」
 まさにだ。そうだというのだ。
「それ故にです」
「美は夜にあるもの」
「私はこれまで頭ではわかっていました」
 そのことがだというのだ。
「しかし心ではです」
「そうではなかったのですか」
「その通りです。今になってです」
「そうだったのですか」
「しかし。わかれば」
 どうかというのだ。そうなれば。
「この中にずっといたいと思います」
「夜の中に」
「そうです。この中にです」
 いたくなっているというのだ。昼ではなくだ。
 その夜の月明かりの中を進みつつだった。やがてだ。
 館が見えてきた。その館を見てベルリンの者が言った。
「あの館ですね」
「はい、皇后様の仰っていた」
 二人は直感した。あの館こそがだとだ。そしてだ。
 その中の一室、柵のある窓を見てだ。彼等は確信した。
「あの部屋ですね」
「はい、あの部屋だけ柵があります」
「それならあの部屋に陛下がおられます」
「間違いありませんね」 
 こう言い合いだ。そうしてだった。
 周囲を見回す。幸い今はだった。
 見張りの兵達はいない。彼等にとって僥倖だった。ビスマルク
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