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永遠の謎
654部分:最終話 愛の死その五

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最終話 愛の死その五

 皇后はだ。ここで言った。
「ただ。問題はです」
「それはですね」
「そうです。事前に陛下がご存知ならば」
「では私がお伝えしましょう」 
 皇后がここで言った。
「そうさせてもらいます」
「皇后様がですか」
「バイエルンの宮廷は私の実家です。ですから」
「陛下にお伝えすることもですか」
「いえ。あの城の場所はわかっていますので」
 それでだというのだ。
「真夜中に密かに窓に人をやってです」
「そうして陛下に」
「はい、お伝えします」
 そうするというのだ。王に対して。
「都合のいいことにあの方は夜に起きられていますので」
「だからこそですか」
「真夜中に。あの方のお部屋の窓のところに人をやりです」
 そしてだ。王に伝えるというのだ。
「そうします」
「それではですが」
 皇后の話を聞いてだ。ホルニヒは。すぐにだった。
 皇后に対して身を乗り出してだ。己の胸に右手を当てて申し出たのだった。
「その役目は私が」
「貴方がですか」
「はい、そうさせて頂けるでしょうか」
「見つかるかも知れませんが」
「断じてそうはなりません」
 彼とてだ。覚悟はできていた。それでだった。
 強い言葉でだ。皇后に対して申し出たのである。そのホルニヒの顔を見てだ。
 皇后もだ。暫し考えそのうえでだ。彼に述べた。
「わかりました」
「ではその様にして」
「はい、お願いします」
 ホルニヒにだ。静かに告げたのだった。そしてだ。
 ホルニヒは皇后の言葉を受けてだ。その前に片膝をついた。そのうえで言ったのである。
「有り難き幸せです」
「御礼には及びません。ですが」
「はい、必ず陛下にお伝えします」
「貴方があの方にお伝えしてからです」
 それからだというのだ。ホルニヒとベルリンの者達にも話す。
「私達は動きます」
「いよいよですね」
「間も無く賽は投げられます」
 運命のだ。それがだというのだ。
「そしてその賽がです」
「陛下をお救いするのですね」
「その通りです。あの方は王です」
 バイエルン王、そうであるというのだ。
「狂人として囚われになっている様な方ではないのですから」
「そうです。だからこそ」
「私達は賽を投げましょう」
 皇后は確かな顔で周囲を見つつ言った。
「間も無く」
「畏まりました。それでは」
「あの方の為に」
 誰もがだ。皇后の言葉に頷きだ。そうしてだった。
 ホルニヒは皇后からだ。その城の王が幽閉されている部屋の窓のところに向かった。夜に紛れて。
 夜は黒ではなかった。濃紫だった。その紫の中でだ。

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