653部分:最終話 愛の死その四
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最終話 愛の死その四
騎士は王にだ。今度は静かに述べた。
「ではだ」
「迎えに参ります」
こう告げてだった。騎士は王の前から姿を消した。その彼と入れ替わりにだ。
扉をノックする音が聞こえてきた。そうしてだ。
グッデンの声がだ。扉の向こうから王に尋ねてきた。
「陛下、宜しいでしょうか」
「診察ですね」
「はい、入って宜しいでしょうか」
「どうぞ」
表情を消して扉に顔を向けてよしと述べた。それからだ。
グッデンが入って来た。そうしてだ。王と話し診察をしたのである。
その診察の後でだ。グッデンはこうホルンシュタインに述べた。彼もまたこの場所にいるのだ。そうしてそのうえでだ。王を見ていたのだ。様々な感情をその中に含めて。
そのホルンシュタインにだ。グッデンは話すのだった。
「やはりあの方はです」
「狂気には陥っておられませんか」
「何処からどう見てもです」
そうだというのだ。王はだ。
「正常な方です。ただ」
「ただ、ですか」
「深い憂いの中にあります」
「憂いですか」
「それ以外は至って正常です」
医師としての良心がだ。こう言わせた。
「ですから。一年と一日の後は」
「はい、わかっています」
ホルンシュタインもだ。そうだと彼に答える。
「あの方は王ではなくなっていますが」
「幸せに過ごされます」
「幸せ。あの方は久しくそれを感じられていたのか」
「憂いの中にそれはありません」
これも医師としての言葉だった。
「だから。それを取り払うことができれば」
「そうですね。それがあの方にとってもいいですね」
「私もバイエルンの人間です」
グッデンにも良心はある。だからこその言葉だった。
「陛下を何とか御救いしたいです」
「そしてバイエルンをですね」
「その為にもです」
あえて王を退位させた。そうしてなのだった。
王の診察の結果王を狂気に陥ってるとした。しかしそれはだった。
偽りだった。その偽りには後ろめたさがある。良心とその後ろめたさの間でだ。
彼もまただ。動いていた。そしてだった。
ホルニヒ達は計画を決定した。そのことについてだ。
エリザベートにだ。こう話したのである。
「陛下が湖に来られた時にです」
「その時にですね」
「はい、小舟を出して御救いします」
「あの方は毎日湖のほとりや森の中を散策されていますね」
「はい、そのお姿を確認しています」
ホルニヒはこのことを皇后に述べた。
「ただ。周りには兵士達がいます」
「それをどうするかですが」
「既にビスマルク卿が動かれています」
ここでも彼だった。その卓越した政治力を使ったというのだ。
「あの方がバイエルン側にベルリンに軍を呼んでおられます」
「その陛下の身辺を
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