649部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその二十六
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と同じだ。しかしだ。
王は言った。その考えを。
「私が去るのは間も無くですから」
「あの、くれぐれも申し上げます」
グッデンは王の今の言葉に暗殺を疑われていると考えた。それでだ。
すぐにだ。身をやや乗り出してそのことを否定したのである。
「我々はあくまで陛下のことを考えてです」
「身の安全はというのですね」
「それをどうして害するのでしょうか」
このことは誰もが保障できた。ルッツやホルンシュタインでさえもだ。
だからこそ言ったのである。しかしだ。
王はだ。王と他に僅かな者だけがわかることをだ。今言ったのである。
「間も無く私の旅は終わるのですから」
「旅行も一年の後でしたら」
「そういうことだと思われますか」
「違うのでしょうか」
「いえ、そう思われているのなら構いません」
グッデンにも今自分の前にいる誰にもわからないことだとわかっているからこそ。王はこう述べた。
そしてだった。グッデン達に静かに述べた。
「では馬車を用意して下さい」
「それは既にできています」
「今にでも出発できます」
彼等は王に即答した。
「では馬車に乗って頂けますか」
「そうして頂けるのですね」
「はい」
暴れることはしなかった。最初からそのつもりはなかった。
しかしだ。その行く先は尋ねたのだった。
「それで何処に向かうのでしょうか」
「シュタルンベルク湖です」
そこだと。グッデンが答える。
「その湖のほとりの城にです」
「私は入るのですね」
「そこで私が診察させて頂きます」
「わかりました。それではです」
「今からそちらに向かいましょう」
こう話をしてだった。王は玉座から立った。
そしてそのうえでだ。グッデン達に周りを囲まれてだ。
それから部屋を後にして城を後にする。その動きはあくまで静かで気品があった。王であるのに相応しいその身のこなしでだ。王は今この世の玉座から降りたのである。
第三十六話 完
2011・12・14
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