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永遠の謎
64部分:第五話 喜びて我等はその二
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第五話 喜びて我等はその二

「何時までも」
「では陛下、その夜の為に」
 侍従もだった。そのワーグナーの音楽を聴きながらここでだ。王に対してある申し出をするのだった。その申し出というのは。
「コーヒーをお持ちしましょうか」
「コーヒーか」
「はい、それとケーキを」
 コーヒーだけではなかった。それもだった。
「チョコレートケーキを如何でしょうか」
「ザッハトルテか」
 王はチョコレートケーキと聞いて述べた。
「それか」
「はい、それです」
「ではもらおう」
 ザッハトルテと聞いてだった。王は微笑みになりそのうえで答えた。
「ウィーンのそれをな」
「ウィーンですね」
「シシィがいるあの街のものだな」
「そういえばエリザベート様ですが」
 話が変わった。王の七歳年上の従姉の話になる。王と彼女は王がまだ幼い頃より親交があった。それが彼等の交流であったのだ。
「ウィーンでは随分と」
「ハプスブルグ家は古い因習が多いからな」
「そうですね。それもかなり」
「そうだ。シシィは翼を持っている」
 こんなことも言う王だった。
「だからだ。ハプスブルグ家に留まるのは」
「あの方にとってお辛いですか」
「そう思う」
 まさにそうだというのであった。
「果たしてどうなるかだな」
「旅をはじめられたそうですが」
「いいことだ」
 王はこのことを肯定した。
「彼女にとってはな。森や山、谷を見ることはだ」
「よいことなのですね」
「馬に乗るのも好きなのだ」
 この点は王も同じだった。彼も乗馬を愛している。馬に乗りながら何を見ているのか、それは王だけが知っていることだった。
「だからこそだ」
「それでなのですか」
「そうだ、彼女は旅をするべきだ」
 王はいつもの遠い目になって述べた。
「是非な」
「ではあの方は」
「縛り付けては駄目なのだ」
 遠い目はそのままだった。
「何があろうとも」
「それをあのウィーンの宮廷が理解していればいいのですが」
「しないだろう」
 王の言葉が悲しいものになった。
「あの宮廷はな」
「それはありませんか」
「あの宮廷はミュンヘンとは違う」
 悲しい言葉のまま語る。
「何もかもが古い因習の中にある」
「それでなのですね」
「そうだ。双頭の鷲はシシィとは合わないのだ」
「あの方のその翼には合わない」
「時々は。そうした旅で心を癒すべきなのだ」
 これが王のエリザベートへの考えだった。彼は彼女のことを理解していた。そうしてそのうえで。その従姉を心から心配していたのだ。
 そしてであった。遂にミュンヘンにだ。彼が戻ってきたのだった。
 ワーグナーは男爵に案内されまずは宿泊先のホテルに入った。その見事な部屋の中であらためて男爵と話をするのだ
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