第二章
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「若し受け入れればだ」
「はい、我が国は大きな損害を受けます」
「イギリスからの貿易の利を失うのです」
「これは受け入れられません」
「あの国との貿易を続けましょう」
「そうする、しかしだ」
ここで皇帝はさらに言った。
「フランスの要求を受け入れないとだ」
「戦争ですね」
「フランスとの戦争になりますね」
「ナポレオンが水か瀬軍を率いてきますね」
「そうして戦争になりますね」
「その場合どうするのだ」
皇帝は廷臣達にその顔を険しくさせて問うた、サンクトペテルブルグの宮殿は只でさえ寒いが皇帝はナポレオンと再び戦うことに危惧を覚えつつ問うた。
「一体」
「その時は」
「もう手は一つしかないかと」
「幸いトルコとの戦争は終わりそうですし」
「我々の有利なままに」
「それではです」
「あの方に」
まさにと言うのだった。
「指揮を執って頂きましょう」
「あの方ならばナポレオンにも対することが出来ます」
「その筈です」
「あの男か」
皇帝は廷臣達の言葉にその顔をこれまで以上に険しくさせて応えた、そのうえで彼等に対してこう言った。
「卿等はそう言うがだ」
「陛下はですか」
「あの方は用いられたくないですか」
「そうなのですか」
「アウステルリッツでは敗れている」
この戦いではというのだ、先程話に出たロシアがオーストリアと共にフランスと戦いそして敗れた戦いだ。
「それを思うとな、しかも妙に女癖が悪く動きも鈍重だ」
「だからですか」
「あの方はですか」
「用いられたくないですか」
「そうだ、しかももう六十五を過ぎているのだ」
年齢的な問題もあるというのだ。
「フランスに対することが出来るか」
「しかしです」
「いざとなればあの方しか思い浮かびません」
「折角トルコとの戦いが有利なのです」
「若しフランスと戦いになれば」
「あの方にご出馬を願いましょう」
「あの男しかいないのか」
皇帝は廷臣達の言葉に苦い顔になった、だが廷臣達だけでなく当の軍に民達からも彼の人気は高くフランスとの戦争になれば彼を用いることにした。
ロシアはナポレオンが出した勅令を無視してイギリスとの貿易を続けた、するとフランスとの関係は忽ちのうちに悪化し。
フランスはロシアに大軍を送りナポレオン自ら率いて彼等から見れば征伐することになった、欧州中から集められたその大軍のことを聞いて皇帝は言った。
「これは予想通りだが」
「はい、問題はです」
「あの大軍をどう迎え撃つか」
「我等は劣勢です」
「兵の数は揃えられても」
「あのナポレオンが自ら大軍を率いています」
「それでは」
「勝てるものではない」
皇帝は自ら言った。
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