第二章
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そしてそれだけでなくだ、ウイスキーもだ。
ボトル一本空けた、それにチームメイト達は驚いて言った。
「飲むな」
「噂には聞いてたけど凄いな」
「日本酒一升空けてか」
「ウイスキーもボトル一本か」
「これ位は飲めるで」
新潟弁にようやく関西弁が入ってきた感じのニュアンスでの返事だった、今井は元々新潟生まれなのだ。
「新潟は米どころでな」
「日本酒有名やしな」
「上杉謙信さんもお酒好きやったし」
「それでか」
「自分もやな」
「ああ、飲めるで」
実際にというのだ。
「これ位はな」
「日本酒一升空けてか」
「それでウイスキーもボトル一本か」
「それだけ空けられるんやな」
「酒は好きやで」
大好きなそれを心ゆくまで飲めたことに上機嫌になっての返事だった。
「そやからな」
「それだけやな」
「飲めるんやな」
「そやねんな」
「そや、今日も飲んだし」
それにとだ、今井は上機嫌のままさらに言った。
「明日もな」
「飲むか」
「そうするんやな」
「酒は大好きやからな」
こう言うのだった、そして彼はチームメイト達と一緒に酔って宿に帰ったが部屋に入ったその時にだ。
部屋に監督である西本がいた、それで彼は最初おかしいと思った。
「あれっ、何で部屋に監督がおるんや?」
「おい、御前何でここに来たんや」
西本は訳がわからない今井に言ってきた。
「御前の部屋は上の階やろ」
「あっ、ひょっとして」
「御前相当飲んどるな」
今井の顔は真っ赤だった、表情にも足取りにも酔いが明らかだった。それで西本の顔は見る見るうちに怒ったものになった。
そうしてだ、今井に言うのだった。
「部屋間違えるまで飲むか、それやったらな」
「あの、ひょっとして」
「そこに座れ」
後はしこたま絞られた、怒った西本はやはり怖かった。そしてその最後にだ。
禁酒一年を言い渡された、監督それも怒れば球界一の恐ろしさという西本の言葉に逆らえる者はいない。それは今井も同じだった。
そのことを記者に話してだ、今井はあらためて言った。
「それでほんまにや」
「一年ですか」
「お酒飲めへんかったんや」
「それは辛かったですね」
「西本さんに言われたからな」
「もう飲めないですね」
「怒ったら何よりも怖い」
閻魔よりもというのだ。
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