第五章
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「妻として」
「私ならばですか」
「色々な者を調べたがそなたしかいない」
「彼女を妻に出来る者は」
「そうだ、彼女の悪い面もいい面も理解していて心配しているな」
「その通りです、あれは何かと不幸なことでした」
エレクトラが弟に自分達の母とその浮気相手を殺したことはというのだ。
「何といいますか」
「残念な話だったか」
「我々王家の者も止めるべきでしたが」
「誰もをだな」
「はい、アガメムノン様までも」
ことの発端である娘を生贄に捧げ妻の怒りを買い殺されたこの王にしてもというのだ。
「止められれば」
「そう思うか」
「はい、そして彼女は」
エレクトラはというのだ。
「その中にいます」
「止めるべきだった」
「残念なことでした」
「そして今に至る、だがな」
「それをですね」
「その残念な流れを止めたいな」
「はい」
是非にとだ、ピュラデスはアポロンに答えた。
「そう考えています」
「ならわかるな」
「宜しくお願いします」
ピュラデスはアポロンに強い声でまた答えた、そしてだった。
アポロンはエレクトラをピュラデスの前に連れて行き二人を見合わせた。そうして二人を夫婦にしたのだった。
こうしてアポロンはやるべきことを終えた、そのうえで自身の神殿で烏に言った。
「骨が折れた、だがな」
「無事に収まってよかったですね」
「そうだ、何とかな」
「そうですね、しかし若しアフロディーテ様に相談しなかったら」
「こうはならなかった」
ことを果たせなかったとだ、アポロンもわかって言った。音楽が絶え間なく聴こえているその神殿の中で。
「到底な」
「左様ですね」
「遠くを探すよりも近くか」
「そうすればいる場合もあるということですね」
「そのことがわかった、今回はあらゆる場所を探したが」
「遠くに遠くに」
「それでは見付からない場合もある、ましてや誰かの理解者や愛する者はな」
そうした者はというと。
「身近にいる」
「身近にいていつも見ているから理解して愛せる」
「そういうことだな、私も学ばせてもらった」
「そのことについて」
「よくな、そしてだ」
「次にこうした話があれば」
「このことを生かしていこう、そしてどんな者でもな」
エレクトラの様な苛烈な者でもというのだ。
「いい面もありな」
「理解者、愛している人がですね」
「必ずいる、そのことも覚えておこう」
アポロンは烏にしみじみとして語った、そうしてエレクトラ達に贈る祝福の品のこととアフロディ−テへのお礼のことも烏と話した。話すその顔はことを果たし新たに素晴らしいものを知ることが出来て喜びに満ちているものだった。
神の仲人 完
2018・6・1
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