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永遠の謎
637部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその十四
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第三十六話 大きな薪を積み上げその十四

「これで」
「はい、全てはこれで」
「では。我々は正しいことをしているのか」
「そうではないのですか?陛下にとってもバイエルンにとっても」
「そうであればいい。本当にな」
 大公は今は自分自身に言い聞かせた。そうしたのだ。
 そしてそのうえでだ。周囲にいる彼等に話すのだった。
「何はともあれ賽は投げられた」
「陛下は退位されます」
「これで間違いなく」
「これでバイエルンは救われるか」
 そうは言ってもだった。今の大公は。
 国が救われること以上にだ。悲しみを見てだ。
 周囲にだ。またしても言うのだった。
「だが。陛下は本当に」
「ですから陛下もではないのですか?」
「これはあの方にとっても」
「そうであればいい」
 切実にだ。願っての言葉だった。
「だが。私は完全に陛下を理解できてはいない」
「エリザベート様やビスマルク卿の様に」
「そしてワーグナー氏の様にですか」
「そのことを残念に思う」
 こうだ。心から言うのである。
「これまで生きていてこれ程残念に思ったことはない」
「陛下のことを完全に理解できない」
「そのことをですか」
「あの方を理解できる忠義の者がもっと多ければ」
 どうなっていたかというのだ。
「あの方はああはなっていなかっただろう」
「せめてワーグナー氏がいれば」
「そうだというのですか」
「彼を離したのは失敗だったか」
 ワーグナーをミュンヘンから追放した、そのことについても大公は再び考えた。
「それにより。陛下が塞ぎ込んでしまわれるのなら」
「それは過ちだった」
「そうだというのですか」
「そうは言っても遅過ぎるが」
 悔恨のみがあった。今の大公には。
「最早賽は投げられたのだからな」
「投げられた賽は元には戻りません」
「その手元には」
「そうだ。拾いはしても元の賽ではない」
 だからこそカエサルも決断したのだ。進むべきか退くべきか。その決断をしたが故にカエサルは英雄となったのだ。そしてローマを変えられたのだ。
 大公もそれはわかっていた。しかしだ。
 彼はカエサルではない、そして王でもない。それならばわからないことだった。そして迷いもだ。どうしても払拭できないものだった。
 その迷い故にだ。彼は今言うのだった。
「あの方にとってまことにいいこととは何なのか」
「そしてバイエルンにとってですね」
「何がいいかですか」
「それは人ではわからないことなのだろうか」
 これが今の大公の言葉なのだった。
「どうしても。それは神のみがお知りになっていることなのだろうか」
「神がですか」
「神のみが御存知だと」
「そうしたものだというのですか」
「そうとすら思う」
 大公は深く考える
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