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神の仲人
第一章

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               神の仲人
 この時芸術と音楽の神アポロンは悩んでいた、その悩みは彼にとっては実に切実なものだった。
 彼はオリンポスにおいてその整った顔を悩ませてそうして自身の従者である烏に対して言っていた。
「今回ばかりはだ」
「はい、どうにもですね」
「難題だ」
 そうだと言うのだった。
「これはな」
「エレクトラ王女の結婚ですか」
 烏も難しい顔で言っていた。
「これはです」
「どうにもな」
「正直無理じゃないですか?」
 烏は自身の主にどうにもという声で述べた。
「今回ばかりは」
「私と同じことを言うな」
「そりゃ言いますよ」
 そうなるのも当然だというのだ。
「だってですよ」
「エレクトラ王女だからだな」
「自分の弟をけしかけて自分の母親とその浮気相手を殺したんですから」
「しかも執拗に時を待ってな」
「そんな相手はとても」
 それこそというのだ。
「並の人ならですよ」
「妻にはな」
「選ばないですよ」
「私もそう思う」
 アポロンもこう答えた。
「到底だ」
「あの方が結婚出来るとは」
「その伴侶を見付けるなぞな」
「出来ないですね」
「あのメディアとどちらが恐ろしい女か」
「そりゃメディア王女は別格ですが」
 それでもと言う烏だった。
「エレクトラ王女もですよ」
「かなりのものだな」
「はい、ですから」
 その為にというのだ。
「私は今回はです」
「無理だと思うか」
「そう思います、諦めるべきでは」
「しかしな、やはり人はな」
 アポロンは腕を組み難しい顔のまま烏に言った。
「伴侶を得てだ」
「夫婦で暮らして子をなしてこそですね」
「繁栄していく、だからな」
「何とかですね」
「エレクトラにも相手を見付けないといけない」
 人の繁栄の為にもというのだ。
「そうしないとならないのだ」
「そういうことですね」
「しかしな」
「そのことについては」
「正直難しい」
 このことを言うアポロンだった。
「彼女が妻でいいという男がいるか」
「人で、ですね」
「人でも神でも他の種族でもだ」
 それこそというのだ。
「誰がいるか」
「テューポーン位でしょうか」
「エトナの火山の底にいるぞ、呼ぶか」
「まさか、あんなおっかなくて物騒なの二度と世に出せないですよ」
 神々でさえ太刀打ち出来ず逃げ出した様な相手だ、その様な相手はというのだ。
「絶対に」
「そうだな、だったらだ」
「もう相手がですか」
「いないのではないか」
「そう思えますか」
「どうしてもな。しかし言っても仕方がない」
 アポロンは何とか自分自身を前向きにさせて烏に話した。
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