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勝てぬもの
第二章
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 それでだ、田村麻呂も言うのだ。
「本朝に従い民になればだ」
「それでいいか」
「こちらとしてもな」
「そして私の命もか」
「私が何としても守る」
 田村麻呂は強い声で言い切った。
「だからだ」
「朝廷に降れというのか」
「そうしてくれるか」
「そうだな」
 少し考えてからだ、そしてだった。
 阿弖流為は田村麻呂に朝廷に降ることを言った、田村麻呂はこのことに大いに喜びすぐに朝廷に伝えた。すると朝廷は彼が見た通りにだった。
 阿弖流為をどうするかで激しい議論が起こった、ある者は処刑を言いある者は助命を言った。だが田村麻呂の懸命の説得と助命が功を奏し。
 阿弖流為は助命され本朝の将として迎えられることになった、田村麻呂はこのことが決まってから阿弖流為自身にこのことを告げた。
「朝廷も許してくれた」
「私が朝廷に降り将となることをか」
「そうだ、かなり議論は紛糾したが」
 それでもというのだ。
「認めてくれた」
「そうなのか」
「それではな」
「これからはだな」
「共に戦おう」
「わかった、しかしだ」
 ここでだ、阿弖流為は田村麻呂に暗い顔で述べた。
「私はどうも近頃な」
「どうしたのだ」
「身体の調子が悪い」
「病か」
「そうらしい、だから今は休みたい」
「そうしてか」
「そうだ、身体がよくなってからな」
 そのうえでというのだ。
「共に戦っていいか」
「無論だ、病で満足な戦は出来ない」
 田村麻呂もそれならと応えた。
「ならばな」
「今はな」
「ゆっくり養生することだ」
「そうさせてもらう」
 こう言ってだ、阿弖流為は本朝の将となることが認められたが病で床に臥せってしまい戦に出ることは出来なくなった。田村麻呂はその彼の早い回復を願ったが。
 彼の病は日増しに悪くなり遂には床から出ることが出来なくなった、そしてどんどん痩せて顔色も悪くなり。
 見舞いに来た田村麻呂にもだ、こう言った。
「どうもだ」
「そこから先を言うか」
「言わせてもらう」
 自分の枕元に座る彼に言うのだった。
「私は長くない」
「馬鹿を言うのだ、そなた程の者がだ」
「病にか」
「負ける筈がない」
「そう言うがだ」
 それでもとだ、阿弖流為は言うのだった。
「私はもう起き上がれない」
「床からか」
「そして飯も喉を通らなくなった」
「粥は食えるな」
「その粥も日増しにだ」
「喉を通らなくなっているか」
「これではだ」
 最早、と言うのだった。
「長くない」
「そう言うのか」
「そうだ、最早な」
「気をしっかりと持て」
 それならばとだ、田村麻呂は阿弖流為を励まして言った。
「病は気からと言う、気をしっかりと持てば」
「それでか」
「病も治る、だからな」
「ま
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