第四章
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「そうだな」
「はい、その通りです」
「やはりな、ではだ」
「では、ですか」
「私は彼の友だった」
親友と言ってもいい、そうした間柄だったというのだ。
「心からのな、そしてだ」
「そして、ですか」
「友ならばその敵討ちをするものだ」
その友情に報いる、その為にというのだ。
「それがギリシアの勇者の為すべきことだな」
「それでは」
「今しがた決めた」
まさにと言うのだった。
「私もトロイアに行こう」
「そうして頂けますか」
「そなたは先に陣に行ってアガメムノン王に伝えてくれ」
ギリシア側の盟主である彼にというのだ。
「私は準備を整えてだ」
「そうしてですね」
「すぐにトロイアに向かう、ではな」
「はい、そのことをです」
「アガメムノン殿に伝えてくれ」
「わかりました」
従者も応えた、そしてだった。
従者はすぐにトロイアを囲むギリシアの軍勢の陣地に戻った、アキレウスは彼を送るとすぐに供の者達に出陣の用意を命じた。するとだった。
供の者達は自分達の主に怪訝な顔で問うた。
「あの、出陣されては」
「それではです」
「ご主人様は」
「神託に従えば」
「それでもいい、敵討ちの為だ」
アキレウスは彼等に毅然として答えた。
「私は行く、友が討たれてだ」
「敵討ちに出なければ」
「それではですね」
「ギリシアの勇者ではない」
「だかですね」
「そうだ、私は行く」
ここでも毅然として言った。
「そしてだ」
「パトロクロス様の仇を取られますか」
「そうされますか」
「ですがそうされれば」
「その時は」
供の者達はアキレウスに怪訝な顔で言った。
「神託に従えば」
「実際にギリシアとトロイアの戦は長く続いています」
「神託通り」
「それでは」
「そうだな、私は死ぬ」
アキレウスは自ら神託のこのことを言った。
「間違いなくな、しかしだ」
「それでもですか」
「パトロクロス様の敵討ちの為に」
「あの方のご友人として」
「戦いに行かれますか」
「そうする、ヘクトール殿を倒して彼の敵討ちは私にしか出来ない」
だからだというのだ。
「それならばだ」
「出陣されて仇を取られる」
「ご自身がどうなっても」
「そうされますか」
「そうする、ギリシアの勇者としてな」
こう言ってだ、実際にだった。
彼はトロイアに出陣しヘクトールを討った、だが神託の通り唯一の弱点であった踵によりによってと言うべきかこの戦いの元凶と言えるパリスの矢を受けてだった。
こと切れた、神託は当たってしまった。だが親友の仇を取れたのかその死に顔は澄み切ったものだった。その顔でパトロクロスの横に葬られた。トロイアが陥落したのは彼が死んで間もなくだった。全ては神託の通りだっ
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