第二章
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「勝つのならな」
「それでいいですね」
「ではこの戦いはやり過ごしましょう」
「その様に」
供の者達もこう言ってだった、神託を受けてこの度のギリシアとトロイアの戦には加わらないことにした。
そうして自身の屋敷で優雅に過ごしていたがその中で彼は世の話を聞いていた。
「そうか、トロイアからか」
「はい、トロイアの王子パリスがスパルタ王妃セレネを攫いました」
「そしてギリシアの諸都市も激怒しまして」
「遂にアガメムノン王を盟主としてトロイアに宣戦布告しました」
「今大軍が集められています」
「やはりそうなったか、しかし」
アキレウスは供の者達の言葉に曇った顔で述べた。
「随分と愚かな話だな」
「パリスの行いですか」
「彼のそれは」
「何かのきっかけで簡単に争いになる状況だった」
これは誰が見ても明らかだった、最早ギリシアとトロイアの対立は決定的で全面戦争は元々間近であった。
しかしだ、その戦争が起こるきっかけがというのだ。
「だがな」
「他国の王妃を攫ってはじまるとは」
「お世辞にも恰好のつくものではないですね」
「聞こえが悪いです」
「パリスも愚かなことをしました」
「ギリシアでは普通かも知れないが」
それでもとだ、アキレウスは述べた。
「思えばセレネ自身もだしな」
「はい、天空の神ゼウスが前のスパルタ王妃であるレダ様に産ませています」
「それがセレネ王妃です」
「因果は巡りますね」
「ギリシアでは人の妻といえど不義も多いですし」
あってはならない筈だが多い、それで供の者達も言うのだった。
「しかしです」
「やはりいい話ではないですね」
「どうにも」
「このことは」
「そうだ、随分と恰好の悪いはじまりになった」
このことをしきりに思うアキレウスだった。
「そしてこれからだ」
「長い戦いになりますか」
「双方の戦いは」
「神託に従えば」
「そうなる、だから私はここに居続ける」
こう言いつつ葡萄を食った、そうしてまた言った。
「戦いが終わるまでな」
「そうすべきです」
「ギリシアが勝つなら困ることはありません」
「ならばです」
「ここにいてです」
「難を避けましょう」
「それが賢明だ」
こう言ってだった、アキレウスはこの度の戦の盟主となったミュケナイ王アガメムノンの誘いを受けた。だが。
その申し出にもだ、彼は首を横に振って言った。
「私はあの王は好かんしな」
「だからですね」
「余計にですね」
「出られませんね」
「あの王自ら来ようともだ」
アガメムノンとのこれまでのことを思い出しつつ言うのだった。
「私は出ない、そして戦いの後でな」
「別の戦に出られますね」
「そうされますね」
「そうする、私はいい」
こう言ってだ
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