第四章
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「あ奴を連れて行くか」
「うむ、あ奴はこの者とは違い人には生まれ変わらぬがな」
「畜生道か餓鬼道に堕ちるな」
「そうなる者だな」
「あ奴を連れて行こう」
「親族にも迷惑をかけておるし丁度いいわ」
まさにとだ、こう話してだ。
彼等は橘の代わりに連れて行く者を見付けた。しかし。
彼等はあらためてだ、お互いで話した。
「しかし問題は咎じゃな」
「うむ、それだ」
「ここはこ奴の助けを借りるか」
「そうじゃな」
「そうしてな」
「難を逃れるか」
こう話してだ、また橘に言うのだった。
「それでじゃ」
「お主に頼むがある」
「よいか」
「と、いいますと」
橘は鬼達にすぐに尋ねた。
「何でしょうか」
「うむ、実はお経を読んで欲しいのだ」
「わし等の為にな」
「わし等の罪を軽くしやがては打ち消してくれるお経をな」
三人で橘に話した。
「金剛般若経という」
「これを百回唱えてくれ」
「わし等の名を呼んでからな」
「大和に戻ってからでよい」
「寺に貸した金を渡してな」
「それからそうして欲しいが」
「わかりました、助けて頂いたのですから」
それならとだ、橘も快諾した。命を助けてもらったのならそれならばと考えてだ。
「そうさせて頂きます」
「わかった、ではな」
「大和で頼むぞ」
「今からわし等の名も教える」
こう言ってだ、三人はそれぞれの名前を書いた木簡を渡した、そして最初の者が橘に対して名乗った。
「わしは高佐丸という」
「わしは仲智丸という」
「わしは津知丸という」
三人共名乗った、だが橘に木簡を手渡した理由も話した。
「ここで名乗っても忘れよう」
「一回聞いただけではな」
「だから名前を書いたものを渡しておく」
そうするというのだ。
「この木簡を持って行け」
「そして大和で唱えてくれ」
「くれぐれも頼むぞ」
「わかりました」
橘も強い声で頷いた、そしてだった。
三人でだ、鬼達と別れそのうえで大和の自身の里に戻った。するとすぐに迎えた女房にこう言われた。
「子牛のうちの一頭が」
「どうなったのだ」
「急に死にました」
そうなったというのだ。
「やはり子供は」
「うむ、牛もだな」
「人もですが」
「よく死ぬな」
「残念です」
「そうだな、しかし仕方ない」
橘は自分のことは隠して妻に応えた、やがて話そうと思っていたが今話すと何かと色々いらぬことが増えると思ってのことだ。
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