631部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその八
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第三十六話 大きな薪を積み上げその八
「陛下から通すなと言われています」
「いや、それは聞けない」
「既に閣議で決まっているのだ」
議会ではなかった。それは彼等も言えなかった。何しろ議会では決定していない、それはとてもできないことであったからだ。
それでだ。彼等は閣議決定を出した。そして公文書もだ。
首相のルッツのサインがあるそれを彼等に見せてだ。こう言ったのである。
「これを見るのだ」
「むっ、それは」
「首相の?」
「そうだ。陛下は退位されることが決まった」
その公文書も楯にして言うのである。
「だからだ。君達は解散するのだ」
「そんなことできるか!」
「そうだ、陛下が仰ってるんだ!」
「絶対に駄目だ!」
「閣議が何だ!」
民衆は閣議よりも王、国家元首に忠実だった。それでだ。
一斉に、素直に言いだ。ホルンシュタイン達に対する。
そしてだ。将校が言ったのだった。
「どうしても陛下を拘束されるというのですか」
「拘束ではありません」
グッデンが出て来てだ。将校に述べる。
「陛下はかなり重度の精神病、パラノイヤですから」
「嘘ですね」
将校はグッデンのその診察をすぐに否定した。
「陛下はご正気です。誰がどう見てもです」
「そうだ、王様が狂っておられるだと!」
「そんなことがあるか!」
「ある筈がないだろ!」
民衆達もだ。グッデンのその診察に一斉に異を唱える。
それでだ。彼等はだ。
その得物を構えてだ。ホルンシュタインを取り囲む。その中でだ。
彼等が手にしているものに気付いた。それは。
「縄!?」
「それに薬もあるぞ」
「まさかそれで陛下を」
「捕まえるつもりなのか」
「い、いやそれは」
「これはその」
ホルンシュタイン達もそのことにはだ。返答に窮した。そうしてだ。
彼等を囲む衛兵や民衆達に向かおうとする。しかしだった。
数が違った。それでだった。
「まずいですぞ、ここは」
「一旦下がりますか?」
「これだけの数がいてはどうしようもない」
「今のうちに」
多くの者が一時撤退を決めようとする。ホルンシュタインもだ。
グッデンにだ。こう囁いた。
「ドクトル、今はです」
「分が悪いですね」
「あともう少しです」
時間の話も入れての言葉だった。
「ですから今は」
「下がるべきだと」
「そうです。これでは仕方ありません」
こうグッデンに囁くのである。
「今は」
「そうですね。それでは」
彼等はそのまま下がろうとする。しかしだった。
正門が開きだ。そこからだ。
新たに衛兵達が来た。そこにはまた別の将校がいた。その彼がだ。
一枚の書類を出してだ。そしてホルンシュタイン達に言うのだった。
「陛下から
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