625部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその二
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第三十六話 大きな薪を積み上げその二
「まずい、ビスマルク卿は疑念を抱いておられる」
「我々の発表についてですか」
「陛下に関する」
「陛下の奇行にだ」
ルッツが言う奇行とは王が狂気に陥っているという証拠だった。それはまさに精神分裂症、異常性愛者のそれであった。だがその全てについてだ。ビスマルクは疑念を示してきたのだ。
そのことについてだ。ルッツは言うのだった。
「確かに事実ではない」
「はい、全て流言蜚語、いえ捏造です」
「全ては偽りのことです」
誰もがそれは承知していた。王の奇行というものは全て偽りであるとだ。
では何が真実なのか。それは何かというと。104
「陛下はアルプスに篭もられています」
「そして誰とも御会いになられません」
「そのうえで新たな築城を命じられています」
「それだけです」
「そしてその築城についてだ」
どうかというのだ。ビスマルクは。
「ミュンヘンでは問題になっているな」
「財政的な負担が深刻です」
「あのままではバイエルンの財政がもちません」
「ならドイツが助けるだけだがな」
ビスマルクにとってはその程度のことだった。
だがミュンヘンではどうなのか。それについても言うビスマルクだった。
「だがそれはバイエルンには受けられないものだな」
「ドイツに入ってもそれはだと」
「そう考えていますね」
「矛盾だな」
その考えはそういったものだと言うのだった。
「バイエルンの宰相であるルッツ卿も宮廷の要人であるホルンシュタイン卿もドイツ帝国ができる時にはあの方を利用してまで我々についたのだがな」
「その頃あの方は我々には明らかに反対の立場でしたね」
「ドイツ帝国建国の折は」
「それは当然だ。あの方はバイエルン王だ」
それならばだった。バイエルン王ならばだ。
「プロイセン主導の建国を歓迎される筈がなかった」
「それが今も尾を引いてですが」
「あの様になられてもいますね」
「ドイツにとって必要なことだったがな」
ビスマルクはそれは譲らなかった。しかしだった。
「だがあの方の築かれているものは素晴らしい」
「ですがそれは今はです」
「バイエルンを圧迫していますから」
「それで彼等はあの方を退位させようとしている」
そのだ。かつてはプロイセンについた彼等がだ。
「私の考えとは別にな」
「それは何故でしょうか」
「今回は我がプロイセン、いえドイツとは違う考えなのは」
「親プロイセン派である筈なのに」
「彼等はバイエルン人だからだ」
それでだとだ。ビスマルクは看破した。
「その為だ」
「バイエルン人だからですか」
「それが為に」
「彼等は彼等なりにバイエルンのことを考えているのだ」
ビスマルクは言った。彼等はそうだと
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