622部分:第三十五話 葬送行進曲その二十一
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第三十五話 葬送行進曲その二十一
「そうあるべきなのです」
「では陛下は」
「私はそれに仕える身です」
「聖遺物にですか」
「ただそれだけです。城の王として」
だからこそだ。崇拝は望まないというのだ。
それよりもだった。王が求めていることは。
「ですが城の騎士達は理解者であるのです」
「陛下、そしてパルジファルの」
「私はその彼等の世界に入ります」
それがだとだ。王は話すのだった。
「私が入るべきその世界に」
「それがはじまったのがですか」
「この第二幕でした」
「目覚められたことへの拍手でしたか」
「そうでした。そして」
幕を観つつ。王はまた話した。
「第三幕ではですね」
「いよいよです。私があの城に辿り着きます」
モンサルヴァート、その城にだというのだ。
「いよいよです」
「ではその第三幕を今から」
「観させてもらいます」
こう言ってなのだった。王はだ。
その第三幕を観る。そこではだ。
パルジファルは城に辿り着き清められてだ。そうしてだった。
城の中で儀式を行いだ。傷ついていた聖杯城の主アムフォルタスを救う。それからだ。
彼は聖杯城の主になり聖杯を城の中心に置く。クンドリーはそれを見届け安らかな眠りに入る。厳かな儀式の中でだ。幕は降りたのである。
全てを観てだ。王は。
再び拍手をしてだ。それから言うのだった。
「見事でした」
「素晴らしい劇でしたか」
「はい、ワーグナーの全てを見せてもらいました」
こう言ったのである。
「そして聖杯城も」
「その城がですね」
「私が入るべき世界」
「この世にはない城にですね」
「それを見せてもらいました」
満足した顔で言う王だった。そのうえでだ。
コジマに顔を向けてだ。それで言ったことは。
「全ては終わりました」
「終わったとは」
「私が見たかったものを全て見終わりました」
そうだったというのだ。その満足している顔でだ。
「ワーグナーも。芸術も」
「では後は」
「はい、もう見たいものはありません」
何もかも見たというのだ。彼が見たかったものを。
そうしてだった。王はまた話した。
「そしてミュンヘンにいる理由もなくなりました」
「陛下、それでは」
「私はミュンヘンには戻りません」
既にだ。王の城はノイシュヴァンシュタインになっていた。ミュンヘンは王の城ではなくなっていた。そうしてだというのである。
「あの城達で過ごします」
「左様ですか」
「この世を後にするまで」
死をだ。王は口にした。
「それまでは」
「ですが陛下は」
「王であるというのですね」
「その為に為されるべきことが」
「それも全て終わっているのです」
コジマにだ。悲しい顔で話すのだっ
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