617部分:第三十五話 葬送行進曲その十六
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第三十五話 葬送行進曲その十六
それ故にだった。ホルンシュタインにどうしてもだというのだ。
「今のままで充分だった」
「だった、ですか」
「最早どうにもならないのか」
大公は悲しい目になって述べた。
「あの方は。最早」
「何も陛下のお命や身辺に危険を及ぼす訳ではありませんが」
「当然だ。それだけは許されない」
「私とてそれはわかっています」
このことは断固として言うホルニヒだった。
「それだけは許されません」
「そうだ。それならば私は断固として反対していた」
「しかしそれでもですね」
「私はそのことに賛成せざるを得ないのか」
「バイエルン、そして陛下のことを思われているのなら」
「それも陛下の御為か。いや」
ふとだ。大公は目を伏せてだ。
そのうえでだ。今こうしたことを言ったのだった。
「我々は何もわかっていないのではないのか」
「何もとは?」
「あの方を理解することは非常に難しい」
そのことはわかっていた。しかしだったのだ。
「だからだ。我々が今話していることもだ」
「陛下の御為にはならないと」
「そしてバイエルンの為にもだ」
「ではこのまま財政破綻を迎えて宜しいのでしょうか」
「いや、それはあってはならない」
決してだと話す。大公はそのことはわかっていた。
しかし王、自分の甥のことを考えるとだ。どうしてもだったのだ。
それでだ。こう言うのだった。
「だがそれは」
「迷っておられますか」
「間違っている様に思える」
迷いではなかった。不安だった。
その不安を見せてだ。大公は話すのだった。
「どうにもならないのか」
「決断の時かと」
「大公殿下、宜しいでしょうか」
遂にだった。これまで沈黙を守っていたルッツが話す。
「バイエルンの為です」
「この国の為にか」
「お願いします。御決断を」
「陛下は退位だけだなのか」
大公は最後の砦について尋ねた。
「そうなのだな」
「それは私が何があっても保障します」
「私もです」
ホルンシュタインもルッツもだ。そのことはすぐに答えた。
「若し陛下に何かあってはそれは臣下としてあってはならないことです」
「私達はあくまで陛下のことを考えておられるのですから」
「そうだな。ではか」
ここまで話してだった。大公は遂にだった。
ホルンシュタインとルッツにだ。こう言ったのだった。
「私が摂政になりか」
「そしてオットーが王となる」
「その通りです。ではお願いします」
こうしてだった。王にとってその最後の旅の手筈がミュンヘンでも整えられていっていた。王はそのことはだ。騎士から聞いていた。
王は今はミュンヘンにいる。その宮廷の奥深くにだ。この日は王の望みを適える為にそこにいてだ。騎士
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