611部分:第三十五話 葬送行進曲その十
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第三十五話 葬送行進曲その十
それでだ、皇后はこう言うのだった。
「若しそうだとしても」
「それでもですか」
「あの方をですか」
「そうです。お救いします」
この考えは変わらなかった。変える訳にはいかなかった。
それでだ。侍女達、皇后が心から信頼する僅かな者達にだけ告げたのだった。
「宜しいですね」
「わかりました。ではその時は」
「バイエルンに向かいそうしてですね」
「あの方をお救いする」
「そうされるのですか」
「おそらくはビスマルク卿もそう考えておられます」
皇后にはこのこともわかった。
「ですから」
「はい、それではですね」
「ビスマルク卿とも連絡を取りますか」
「そうされますか」
「おそらくビスマルク卿はバイエルンに人をやります」
そこまでだった。皇后には読めたのである。
そのうえでだ。皇后はそのビスマルクについて話すのだった。
「ですから連絡を取るのはです」
「バイエルンで会ってから」
「そのうえで、ですね」
「はい、その時でいいです」
焦りはしなかった。いや、焦ってはならなかった。
だからだ。皇后はこう言ったのである。
「あの方が危機に陥られた時にバイエルンで」
「ではその様に」
「そうされます」
こうした話がだ。ウィーンでも密かに行われたのだった。
皇后はこの話を終えてまたすぐにだった。旅に出た。しかしその間も始終だ。王のことを考えだ。すぐに動けるようにしていたのだ。
ベルリンでもウィーンでも密かに動きがあろうとしていた。しかしだ。
ノイシュバンシュタイン、その城の中でだ。王はだ。
常に傍らにいたホルニヒにだ。こう告げていたのだった。
「ではいいな」
「しかし陛下、それは」
「命令だ」
悲しい目でだ。王は彼に告げていた。
「王のだ。ならばわかるな」
「しかしそれは」
「言った筈だ。そなたをあらゆる役職から解任する」
それは即ちだ。王の前から去れということだった。
「年金は与える。そなたは生活に困ることがない」
「私が求めているものは違います」
ホルニヒは切実に訴えた。
「私は陛下に己の」
「もう充分だ」
忠誠を捧げる、それはだというのだ。
「私はそれに値しない男なのだから」
「いえ、それは」
「そう思ってくれるといい」
ホルニヒの言葉を遮る。悲しい目で座りながら。
「そして私を恨み。私の前から去るのだ」
「陛下、何故その様なことを」
「これまでよく仕えてくれた」
本音がだ。言葉に含まれてきていた。
「しかしそれもだ」
「今日までだというのですか」
「そなたはそなたの人生を歩め」
自分に構うな、そうした言葉だった。
「よいな。それではな」
「陛下・・・・・・」
こうして
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